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発達障害(ADHD・ASD)に向いている仕事|定着率と年収で選ぶ

発達障害(ADHD・ASD)に向いている仕事|定着率と年収で選ぶ

「ADHDだから事務は向かない」「ASDだからプログラマー」——特性から職種を決めるこの考え方は、実は当事者を狭い場所に押し込めてしまうことがあります。この記事では公的統計で「発達障害のある方は実際どこで働き、いくら得ているのか」を確認したうえで、職種名より先に決めるべきことをお伝えします。

この記事の書き手について

障害者転職エージェント「ハッピー」代表・山口徳二(身体障害者手帳5級を持つ当事者/障害者雇用支援の実務20年以上)が執筆しました。数値はすべて公的統計・一次情報にあたって確認し、記事末尾に出典を明記しています。

この記事で分かること(3分で要点チェック)

  • 就職1年後の職場定着率は発達障害71.5%で、障害種別のなかで最も高い([1])。「続かない」は事実に反します
  • 一方で週30時間以上で働く方の平均賃金は月15.5万円と最も低い([2])。続くのに上がらない——ここが本当の課題です
  • 職種の「平均年収」は経験者や管理職を含むため高く出ます。入口の現実に近いのはハローワーク求人賃金(例:システムエンジニア月35.2万円/一般事務月20.8万円)([6])
  • 合理的配慮に障害者手帳は必要ありません([5])。「向いている仕事」より「配慮を設計できる職場」を選ぶほうが、結果として年収は伸びます

第1章|「特性→職種」で決めると、たいてい遠回りになる

「発達障害に向いている仕事」を検索すると、たいてい同じような職種名が並びます。ASDならプログラマーや品質管理、ADHDなら営業や企画——。この対応づけは完全な間違いではありませんが、そのまま信じて職種を絞ると、かえって遠回りになります。

理由は3つあります。ひとつめ、ADHDとASDは併存することが多く、教科書どおりの特性を持つ人のほうが少数です。ふたつめ、同じ「ASD」でも得意なことは人によって正反対になります。みっつめ——これがいちばん大きいのですが、同じ職種でも、会社によって働きやすさがまったく違うからです。

よく言われる組み合わせうまくいくときうまくいかないとき
ASD × プログラマー仕様が文書で渡され、集中できる席がある仕様が口頭・会議中心で、割り込みが多い
ASD × 品質管理・検査手順が明文化され、判断基準が固定されている「臨機応変に」が評価軸になっている
ADHD × 企画・クリエイティブ締切が細かく区切られ、進捗を一緒に見てくれる長期案件を一人で管理させられる
ADHD × 営業訪問と資料作成のリズムが自分で組める日報・経費精算など事務処理が大量にある
事務・データ入力タスクの粒度と優先順位が明示されている「手が空いたら何でも」と頼まれる

当社の支援実務にもとづく整理です。個人差があります。

表の右2列を見比べてください。職種名は同じでも、結果を分けているのは職場の条件のほうです。だからこの記事では、職種の話(第3章)の前後に、条件の話(第1章・第5章)を置いています。

第2章|数字で見る、発達障害のある方の「いま」

定着率は、実は障害種別でいちばん高い

障害者職業総合センターが、ハローワークを通じて就職した5,015人を追跡した調査があります。就職1年後の職場定着率は次のとおりです([1])。

障害種別就職1年後の定着率
発達障害71.5%
知的障害68.0%
身体障害60.8%
精神障害49.3%

障害者職業総合センター「調査研究報告書No.137」(2017年4月)([1])。開示・非開示を合わせた全体の数値です。

「発達障害があると仕事が続かない」という言われ方をすることがありますが、公的データが示しているのは逆です。合う環境に入れたときの継続力は、むしろ高く出ています。

ところが、賃金はいちばん低い

同じ人たちの賃金を見ると、様子が変わります。厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」による、週30時間以上働く方の平均賃金(月額)です([2])。

障害種別平均賃金(月額・週30時間以上)
身体障害26万8千円
精神障害19万3千円
知的障害15万7千円
発達障害15万5千円

厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果」([2])。参考として、一般労働者(フルタイム)の平均は月34万600円です([7])。

この2つの数字が並ぶと、課題がはっきりします

定着率は4種別で最も高いのに、賃金は最も低い。これは「働き続ける力がない」のではなく、最初に入る職務の設計が、伸びない形になっているということです。補助的な作業だけを切り出した仕事は、続けられても等級が上がりません。だから職種選びは、入口の1回が効いてきます。

※透明性ノート:定着率の調査は2015〜2016年度のもので、年次としては新しくありません。開示・非開示や障害種別を横断して比較できる公的調査としては現時点でも最大規模のため採用していますが、絶対値ではなく種別間の傾向としてお読みください。なお令和7年度にハローワークを通じて就職した「その他の障害者」(障害者手帳を持たない発達障害者・難病患者・高次脳機能障害者など)は4,920件でした([3])。

第3章|公的統計で見る、候補になりやすい5つの職種

ここからが職種の話です。ただし「年収◯◯万円可能!」という書き方はしません。公的統計の数字を、正しい読み方とセットでお見せします。使うのは厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」です([6])。

職種平均年収
(賃金構造基本統計)
求人賃金
(ハローワーク・月額)
特性との相性で見るポイント
データサイエンティスト611.9万円30.3万円数字とパターンに没頭できる。会議より分析の時間が長い
ヘルプデスク(IT)609.8万円28.3万円手順が定型化しやすい。一方で対人対応の頻度は高い
システムエンジニア(受託開発)578.5万円35.2万円仕様書ベースで進む。要件定義フェーズは口頭調整が増える
Webデザイナー(Web制作会社)539.6万円27.3万円視覚的思考が活きる。締切管理の支援があると安定する
一般事務541.4万円20.8万円求人数が多く入口が広い。職務の切り出し方で差が出る

平均年収は厚生労働省 job tag 掲載値(令和7年賃金構造基本統計調査を加工)。求人賃金は令和6年度ハローワーク求人統計データ([6])。相性の欄は当社の支援実務にもとづく整理です。

「平均年収」を鵜呑みにしないでください

表をよく見ると、一般事務は平均年収541.4万円なのに、求人賃金は月20.8万円(年換算で約250万円)です。この差は、平均年収に勤続の長いベテランや管理職が含まれているために生まれます。未経験で入るときに見るべきは、右側の求人賃金のほうです。「発達障害でも年収500万円」という見出しは、この左側だけを切り取ると簡単に作れてしまいます。

※透明性ノート:以前の当コラムでは職種別の年収レンジを出典なしで提示していました。検証できない数値は信頼性を損なうため、今回の改訂ですべて厚生労働省の公表値に差し替え、平均年収と求人賃金を併記する形に改めています。

職種を絞り込む順番

おすすめの順番は「職種 → 会社」ではなく、「やれること → 職務内容 → 会社の配慮体制 → 職種名」です。職種名は最後で構いません。求人票のタイトルが「一般事務」でも、中身がデータ整備なら実質はアナリストの入口ですし、その逆もあります。

第4章|追い風は制度にもある(ニューロダイバーシティ)

近年、企業側の姿勢にも変化があります。経済産業省は「ニューロダイバーシティ」を「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方と定義し、デジタル分野での取組を推進しています([4])。同省は『イノベーション創出加速のためのデジタル分野における「ニューロダイバーシティ」の取組可能性に関する調査 調査結果レポート』(令和5年3月改訂版)を公表し、企業が取り入れる意義と方法論を示しました([4])。

ただし、美談にしすぎないでください

「特性は才能だ」という言葉は励みになりますが、制度が動き始めたことと、目の前の会社に受け入れ体制があることは別です。第2章で見たとおり、賃金は依然として最も低い水準にあります。追い風が吹いているのは事実、でも自分の会社に届いているかは個別に確かめる——この距離感が現実的です。

第5章|職種より先に決める、3つのこと

面接で「配慮が必要なことはありますか」と聞かれて、うまく答えられない方はとても多いです。次の3つを言葉にしておくと、職種を問わず通用します。

① 指示の受け取り方

口頭だけだと抜け落ちるのか、文字にしてもらえば正確に動けるのか。「口頭でいただいた指示は、私からテキストで復唱して確認させてください」——この一文で解決する現場は、想像よりずっと多いです。

② タスクの粒度と締切の刻み方

「1か月後に提出」ではなく「毎週金曜に途中経過を見せる」。締切を細かく刻んでもらうだけで、先延ばしも作り込みすぎも起きにくくなります。これは配慮というよりマネジメントの工夫なので、企業側も受け入れやすい依頼です。

③ 環境(音・光・座席)

イヤーマフの使用許可、窓際や通路側を避けた座席、Web会議のカメラオフ。設備投資を伴わないものが多く、通りやすい配慮です。

障害者手帳がなくても、配慮の対象です

厚生労働省のQ&Aは、合理的配慮の対象となる障害者について「障害者手帳の有無・週所定労働時間等による限定はしていません」と明記しています([5])。診断を受けたばかりの方、手帳を申請していない方も対象です。また採用後に障害を伝えた場合でも、企業には配慮の提供義務があります([5])。開示の考え方はオープン就労とクローズ就労の記事で詳しく解説しています。

「何を配慮してもらえばいいか」から、一緒に整理します

職種選びの前に、あなたが力を出せる条件を言葉にするところから。相談も登録も無料です。

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第6章|未経験から入るときの、現実的なルート

IT系を目指す方から「未経験でも年収500万円になれますか」とよく聞かれます。正直にお答えすると、初年度からその水準になることはほとんどありません。第3章の求人賃金(月27〜35万円)は経験者を含む全国平均なので、未経験スタートはさらに下から始まるのが普通です。当社の支援実感では、未経験でIT職に入った方の初年度は月18〜22万円あたりが中心です。

それでも入口を作る価値がある理由

発達障害のある方の定着率は71.5%([1])。続く力があるなら、伸びる職種に入るほうが3年後の差は大きくなります。月18万円でも、昇給のある職務に入れば3年で景色が変わります。逆に月20万円でも、切り出された補助業務のままだと3年後も月20万円です。年収の作り方は年収400万円の記事で試算表つきで解説しています。

使える支援制度

就労移行支援事業所(原則2年間・自己負担は世帯収入により無料の場合が多い)、公共職業訓練・求職者支援訓練、地域障害者職業センターの職業準備支援。いずれも診断や手帳の要件が制度ごとに異なるため、お住まいの自治体窓口かハローワークの障害者専門窓口でご確認ください。

現場の実感|「何ができるか」より「何がしんどいか」を先に言えた人が強い

当社が支援してきた中で見られるのは、面接で強みを並べた方より、「これは苦手なので、この形にしてもらえると力が出ます」と具体的に言えた方のほうが、入社後の評価が安定しやすいという傾向です。企業が知りたいのは能力の上限ではなく、一緒に働く段取りだからです。(複数の事例をもとに再構成しています。結果には個人差があります)

よくある質問(FAQ)

発達障害に本当に「向いている仕事」はありますか?

職種で一律に決まるものではない、というのが実務での結論です。同じ職種でも、指示の出し方・タスクの区切り方・作業環境で結果が大きく変わります(第1章の表)。職種名を絞る前に、自分が力を出せる条件を3つ挙げられるようにしておくほうが、選べる求人はむしろ増えます。

「発達障害は仕事が続かない」と言われました。本当ですか?

公的データはむしろ逆を示しています。就職1年後の職場定着率は発達障害71.5%で、身体60.8%・知的68.0%・精神49.3%より高い数値です([1])。ただし調査年次は2015〜2016年度のため、傾向の目安としてお読みください。

未経験からITエンジニアになって、年収500万円は目指せますか?

初年度は難しく、当社の支援実感では月18〜22万円からの出発が中心です。一方、job tagによるシステムエンジニア(受託開発)の平均年収は578.5万円、求人賃金は月35.2万円([6])。平均年収には経験者・管理職が含まれるため高く出ますが、経験を積んで到達し得るレンジとしては現実的な数字です。年数と昇給の設計が要になります。

障害者手帳がなくても、配慮を受けられますか?

受けられます。厚生労働省のQ&Aは合理的配慮の対象に「障害者手帳の有無・週所定労働時間等による限定はしていません」と明記しています([5])。ただし障害者雇用枠の求人に応募する場合は、企業の実雇用率算定の関係で手帳が必要になることがほとんどです。

ADHDとASDの両方の特性があります。どう伝えればいいですか?

診断名を並べるより、場面ごとの具体例で伝えるほうが伝わります。「複数の口頭指示が重なると抜けが出るので、チャットで残していただけると正確に処理できます」のように、困りごと+解決策をセットにするのがコツです。診断名を伏せたまま必要な配慮だけを伝える方法もあります。

事務職は避けたほうがいいですか?

避ける必要はありません。求人数が多く入口として現実的です。ただし求人賃金の平均は月20.8万円([6])で、職務の切り出し方によって伸びしろが大きく変わります。応募前に「担当する業務の範囲」「1年後・3年後に任される想定」を確認しておくことをおすすめします。

まとめ|職種名より先に、条件を決める

発達障害のある方の定着率は71.5%と最も高く、賃金は15.5万円と最も低い([1]/[2])。この2つの数字が同時に成り立っているという事実が、この記事の出発点でした。続けられないのではなく、伸びる場所に入れていない——課題はそこにあります。

だから、職種名から入らないでください。指示の受け取り方、タスクの刻み方、環境——この3つを言葉にできれば、選べる求人の幅は広がりますし、入ったあとに伸びます。職種はそのあとで決まります。

【現場から・山口徳二より】

「向いてる仕事、教えてください」と言われるたびに、少し困ります。答えは職種名では出せないからです。
これまでお会いしてきた中で、同じ「ASDの方」でも、静かな部屋で数字を扱うのが最高に合う方と、人と話しながら手を動かすほうが安定する方がいました。特性の名前は同じでも、必要な環境は正反対でした。
だから私たちが最初に伺うのは、診断名ではなく「どんなときにしんどくなりますか」です。そこさえ言葉になれば、あとは求人を当てはめていく作業になります。自分を職種に合わせなくて大丈夫です。合う条件のほうを、一緒に探しましょう。

山口徳二
山口 徳二(やまぐち とくじ)
障害者転職エージェント「ハッピー」代表/身体障害者手帳5級(当事者)/障害者雇用支援 実務20年以上

株式会社リクルート在籍中に大病を患い、後遺症により肢体障害の当事者に。大手障害者専門エージェントを経て、「当事者だからこそ理想とする障害者雇用」を実現するため「ハッピー」を設立。当事者として、また支援者として20年以上にわたり障害者雇用の現場に立ち会ってきました。「きれいごと」ではなく「実際に役立つ」情報をお届けすることを大切にしています。
有料職業紹介事業 許可番号:13-ユ-319514

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参考・出典(一次情報・公的統計)

  1. [1] 障害者職業総合センター(高齢・障害・求職者雇用支援機構)「調査研究報告書No.137 障害者の就業状況等に関する調査研究」2017年4月 https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku137.html
  2. [2] 厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果」(令和5年6月調査) https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001233721.pdf
  3. [3] 厚生労働省「令和7年度 障害者の職業紹介状況等」(令和8年6月公表) https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001713333.pdf
  4. [4] 経済産業省「ニューロダイバーシティの推進について」/『イノベーション創出加速のためのデジタル分野における「ニューロダイバーシティ」の取組可能性に関する調査 調査結果レポート』(令和5年3月改訂版) https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/neurodiversity/neurodiversity.html
  5. [5] 厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A【第三版】」 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001237499.pdf
  6. [6] 厚生労働省 職業情報提供サイト「job tag」(令和7年賃金構造基本統計調査を加工した平均年収/令和6年度ハローワーク求人統計データによる求人賃金):データサイエンティスト https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/323 / ヘルプデスク(IT) https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/320 / システムエンジニア(受託開発) https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/312 / Webデザイナー(Web制作会社) https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/326 / 一般事務 https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/428
  7. [7] 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/index.html
※本記事の数値は公表統計にもとづく目安であり、就職・定着・収入を保証するものではありません。
※本記事は一般的な情報提供であり、医学的診断や個別の労働問題に関する助言ではありません。診断・支援制度の利用については医療機関、都道府県労働局・ハローワークの障害者専門窓口等にご相談ください。
※事例は個人が特定されないよう複数事例をもとに再構成したもので、結果には個人差があります。
※制度・法令・統計は改正や更新により変わる場合があります(本記事は2026年7月時点の情報にもとづきます)。
執筆・監修:障害者転職エージェント ハッピー(山口徳二)/最終更新:2026年7月
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