精神障害のある方が知っておくべき障害者雇用の現状と可能性 | 障害者転職エージェント ハッピー


精神障害のある方が知っておくべき障害者雇用の現状と可能性


こんにちは。障害者転職エージェント「ハッピー」の山口です。
精神障害のある方の雇用は、近年急速に進展しています。2018年の障害者雇用促進法の改正により、精神障害のある方が法定雇用率の対象に加えられたことを契機に、多くの企業が積極的な採用を進めるようになりました。しかし、精神障害者雇用には職場の理解や配慮が不可欠であり、定着の課題も残っています。本コラムでは、精神に障害のある方の雇用の現状や可能性を解説するとともに、安定して働くためのポイントをお伝えします。ぜひ参考にしてください。

【精神障害者雇用の歴史的背景】
日本では、精神障害のある方の雇用は長らく色々な制度の対象外とされてきました。しかし、発達障害を含む精神疾患の社会的理解が進むにつれて法整備が進められ、2018年には精神障害のある方が法定雇用率の対象に加えられました。これにより、企業にとって精神障害のある方の雇用が義務化され、採用の機会が大幅に増加しました。2018年以前は精神障害のある方を企業が雇用しても法定雇用率の達成には反映されなかったため、企業側の積極的な採用インセンティブが低かったという背景があります。こうした背景から精神障害雇用は進みにくく、多くの方が一般枠での就労を余儀なくされていたという実態がありました。現在、厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査によると、精神障害のある方の雇用者数は約21万5,000人に達し、近年の障害者雇用の中で最も増加率が高いカテゴリーとなっています。特に、IT・サービス業・小売業・事務系の職種での採用が増えており、今後もさらなる拡大が見込まれています。今後の日本の障害者雇用をリードするのは、精神障害のある方々といっても過言ではありません。

一方で、精神障害のある方の雇用は定着率の低さが課題とされています。たとえば、精神障害のある方の平均勤続年数は約3年5ヶ月と、身体障害者(約12年2ヶ月)や知的障害者(約9年7ヶ月)と比較して短い傾向にあります。これは、職場の理解や合理的配慮の不足、ストレス管理が難しいことなどが影響していると考えられます。

【諸外国と比べる日本の精神障害者雇用】
現在、日本では精神障害のある方の雇用に関する制度は整備されつつありますが、実際の運用面ではまだ課題が多く、十分に機能しているとはいえません。特に、企業の受け入れ体制の未整備や支援機関との連携不足により、雇用後の定着支援が形骸化しているケースも目立っています。制度としては存在しているものの、実際には利用されないことも多く、企業が「手間がかかる」として支援策を敬遠する傾向も見られます。

一方、欧米では精神障害のある方の就労支援が進んでおり、個別支援型の就労プログラム(IPS:Individual Placement and Support)が導入されています。これは、本人の希望に応じた職場を見つけ、定着までの支援を一貫して行う仕組みで、日本でも一部の自治体や企業で導入が進められています。しかし、日本では制度があっても活用の広がりが限定的であり、支援人材の不足や企業側の認知度の低さ、活用の手間を理由に制度を敬遠する風潮が大きな課題となっています。また、欧州では「労働市場インクルージョン政策」により、企業に障害者雇用を義務付けるとともに、補助制度が整備されています。

たとえば、ドイツでは法定雇用率を満たさない企業に補償金を課し、その資金を障害者支援に活用しています。フランスでは、50人以上の企業に障害者雇用率6%を義務化し、未達成企業には補償金を課しています。また、適応職場の提供や合理的配慮の義務化も進んでいます。北欧のスウェーデンでは福祉政策が充実しており、職業リハビリやジョブコーチ制度を活用し、雇用後の定着を重視しています。障害者の起業にも支援制度があり、多様な働き方が可能です。アメリカではADA(障害を持つアメリカ人法)により、障害者差別が禁止され合理的配慮の提供が義務付けられています。また、雇用主が障害のある方を採用すると税額控除を受けられるため、積極的な採用が進んでいます。

このように、各国がそれぞれ独自の制度で障害者雇用を促進しています。一方、日本の法整備は進んでいるものの、企業の理解や実践が追いついていません。フランスの厳格な雇用義務、スウェーデンの長期支援、アメリカの税制優遇などを参考に、より実効性のある施策が求められます。日本では求職者側が自ら適した職場を見極め、単なる「法定雇用率の達成のための枠」ではなく、実際に活躍できる環境を持つ企業を選ぶことが重要です。

【精神障害のある方と発達障害のある方の賃金・雇用条件】
精神障害のある方と発達障害のある方の賃金や雇用条件は、現状ではどのようになっているのでしょうか。最新のデータを基に、具体的な数値を交えながらみていきます。

障害者の平均賃金と賃金格差
厚生労働省の令和5年度障害者雇用実態調査によると、2024年5月時点での障害者の平均月収は以下の通りです。
・身体障害のある方… 23万5,000円
・知的障害のある方… 13万7,000円
・精神障害のある方… 14万9,000円
・発達障害のある方… 13万円
(参考:令和5年度障害者雇用実態調査)

安定した長期就労を実現するためには、企業側の環境整備だけでなく、当事者自身のセルフケアやコンディション維持のスキルアップも不可欠です。 また、組織の一員としてチームプレーを意識し、他者への配慮を持つことに加え、「報・連・相(報告・連絡・相談)」を適切に行う姿勢も重要になります。精神的・身体的な調子を整え、無理なく働き続けるためには、自己受容と適切な援助要請(Help-Seeking)の力を身につけることが欠かせません。周囲と円滑にコミュニケーションをとりながら、必要なサポートを適切に求め、働きやすい環境を主体的に整えていくことが、安定した就労につながります。

たとえば、体調管理のために定期的なカウセリングや休息、適度な運動を取り入れる、ストレスを感じたときに周囲へ適切に相談できる行動力を養う、就労に役立つスキルの習得を継続するといった取り組みが、自分の働きやすさを向上させる要素となります。また、自身の障害特性を理解し、「どのような配慮があれば能力を発揮しやすいのか」を整理しておくことで、企業側に的確に伝えられるようになります。就労の安定は企業の努力だけで成り立つものではなく、障害当事者が自身の健康や働き方を意識しながら、企業と対話し、調整を続けていくことも大切です。自らの力で働く環境を整えつつ、適切な支援を求めながら歩み続けることで、より穏やかで継続可能なキャリアが実現します。

【希望に満ちた未来へ】
精神障害や発達障害のある方の雇用は、今、新たな時代を迎えています。障害者手帳を保持しながら働くことは、もはや特別なことではなく、社会の中で当たり前の選択肢のひとつとなりつつあります。特に精神障害者保健福祉手帳を活用した転職・就職は、障害者雇用の主流となりつつあります。 また、スキルアップを続けることで、より良い雇用条件で採用されることも十分に可能です。そのためには、適切な環境と制度のもとで自分の能力を最大限に発揮できる職場を慎重に選ぶことが大切です。重要なのは、「焦らず、自分に合ったペースで進むこと」です。精神障害や発達障害があっても、自分の特性を理解し、適した職種を選ぶことで、安定した仕事と収入を得ることができます。適切な配慮や支援を受けながら、一歩ずつ前進していきましょう。私たち障害者転職エージェントハッピーと共に、あなたに最適なキャリアを築いていきませんか?

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