年末年始を控えた精神障害者のメンタルヘルスケア | 障害者転職エージェント ハッピー


年末年始を控えた精神障害者のメンタルヘルスケア


■「試練の季節」を「自己理解のチャンス」に変える
年末が近づくと、いつもと違う不安感に襲われる—そんな経験はありませんか?

精神障害のある方からは、年末年始の時期に「気分が沈みやすくなる」「焦りが募る」「孤立感を感じる」といった相談が増えます。ある20代の男性相談者は「年末になると、なぜか焦燥感が止まらなくなる。仕事も上手くいっていないような気がして、今年一年が失敗だったように思える」と語ってくれました。30代の女性相談者は「年末の忘年会や親戚との集まりが苦痛で、連休をどう過ごそうか毎年悩む」と打ち明けています。

さらに多くの方が年末になると「この1年、結局何をしていたんだろう」「自分は本当に成長できたのか」といった自己否定感に襲われることもあります。周囲の充実した年越しの様子を見ると、自分だけが取り残されたような感覚に陥り、自責感がどんどん強まっていく—年末年始は、そうした嫌な季節でもあるのです。

こうした経験はめずらしくありません。むしろ、精神障害のある方にとって、年末年始は特別な配慮が必要な季節なのです。本コラムでは、この時期を乗り越えるためのためになる知識と実践的な工夫をお伝えします。

■第1章 年末年始が「危険な季節」である理由
精神障害のある方が年末年始をつらく感じるのは、気の緩みや気合いが足りないからではありません。複数の要因が重なる季節だからです。

本コラムでは精神障害全般を対象としていますが、特に注意が必要なのは、発達障害(ADHD、ASD等)のある方です。発達障害そのものだけでなく、年末年始のような環境変化やストレス増加の季節には、二次障害としてのうつ病や不安障害が浮上しやすくなります。発達障害のある方は、環境への適応に通常よりも大きなエネルギーを消費するため、年末年始の社会的プレッシャーと環境の乱れが重なると、心身に顕著な影響を与える傾向があります。

▼季節性感情障害(SAD)の影響
まず重要なのが、日照時間の減少です。冬になると、私たちの体内で作られるセロトニンが減少します。セロトニンは気分や睡眠、食欲を調整する神経伝達物質で、精神安定にとって不可欠です。季節性感情障害(SAD)は、秋から冬にかけてこのセロトニン不足が原因で生じる沈み込みや無気力のことを指します。精神障害のある方は、そもそも神経伝達物質のバランスに課題を抱えているため、SADの影響を受けやすい傾向があります。発達障害のある方も同様に、この季節的な変化の影響を受けやすいグループです。

▼社会的プレッシャーの重層化
同時に、年末年始は社会的プレッシャーが集中する時期です。忘年会や新年の挨拶回り、ギフトの準備、家族との関わり—これらすべてが同時期に襲いかかります。特に精神障害のある方にとって、こうした対人関係の負荷は、気力や判断力を消耗させます。

▼孤立感と自責感の深まり
年末年始は、幸せな家族風景や充実した年越しの情報があふれかえる時期です。その中で、「自分だけが上手くいっていない」という相対的な剥奪感が生じやすくなります。さらに、過去の失敗や達成できなかったことが思い出され、自責感が強まる傾向にあります。

■第2章 季節性感情障害への対策
年末の不調は避けられませんが、対策することで影響を最小化できます。

▼光療法の活用
最も有効なのが光療法です。朝日を浴びることが理想的ですが、冬の朝は暗いため、明るいライト(10,000ルクス相当)に数十分当たることで効果が期待できます。毎朝同じ時間に光を浴びることが重要です。20代の相談者は、「朝6時に5分間、医療用の光療法ライトに当たるようにしたら、夕方の気分の落ち込みが減った」と報告してくれました。

▼ビタミンDサプリメントと栄養
もうひとつの対策が、ビタミンD補給です。日光に当たる時間が減るとビタミンD生成が低下し、これが気分悪化に関連しています。医師の指導下でサプリメント補給を検討する価値があります。

▼意識的な外出と運動
天気の良い日は短くても外に出る、軽いストレッチやウォーキングを日中に行うといった習慣も効果的です。30代の女性相談者は「午前中に10分散歩する」というシンプルなルールを設けることで、年末の気分沈み込みが軽減されたと語っています。

■第3章 休暇期間中の生活リズム管理
「リズムの崩れ」が精神状態に与える影響は極めて大きいものです。特に連休中は要注意です。

▼守るべき3つの習慣
連休中こそ、以下の3つを意識的に守ることが重要です。
①毎日同じ時間に起床する
休みだからと朝寝坊をすると、体内時計が乱れ、精神症状が悪化しやすくなります。平日と同じ時間に起床することで、脳と体のリズムを維持できます。

②規則的な食事
不規則な食事も体内時計を乱します。朝昼晩、同じ時間帯に食事をとることで、消化器官と脳が一定のリズムを保ちます。

③軽い運動・外出
毎日少なくとも一度は家の外に出て、軽く体を動かしましょう。これが血流を改善し、セロトニン分泌を促進させます。

▼「完璧でなくてもいい」という許容
重要なのは、「完璧を目指さない」ことです。毎日100%達成しようとすると、達成できない日が自責感に変わります。80点、時には60点でも「続いている」ことが大切です。

ここで大切な視点があります。天気が悪い日は、どんな努力をしても山は登れません。同じように、メンタルが落ち込んでいる日もあるのです。そうした日に必要なのは「もっと頑張ろう」という励ましではなく、「今日は天気が悪い日なんだ」と状態を受け入れることです。受け入れることで、初めて「それなら何ができるか」という現実的な対応が生まれます。できないことを責めるのではなく、「今の自分にできること」を丁寧に探す—それが真のセルフケアなのです。

在宅勤務の方は通勤の疲労がない分、かえってリズムが崩れやすいので注意が必要です。

■第4章 年始の新年度に向けた準備
新年には希望と不安が混在するものです。その両方を認めることが大切です。

▼セルフケアプランの作成
年末年始の休暇中に、新年度のセルフケアプランを作成することをお勧めします。具体的には、医師や支援者に相談し、「冬場の過ごし方」「気分が落ち込んだときの対応」「服薬管理」などを書き出します。

▼医師・支援者との事前相談
年末の受診日を逃さず、医師に「年末年始の過ごし方について不安がある」と伝えてください。処方箋の調整や、緊急時の連絡先確認も大切です。支援機関との定期相談がある場合は、その日程を確認しておきましょう。

▼重要なのは「新しい自分」ではなく「続ける自分」
新年は「生まれ変わる」というプレッシャーが伴いやすい時期です。しかし精神障害の管理は「完全に治す」ことではなく、「一日一日、自分を丁寧にケアし続けること」です。高い目標ではなく、「昨年と同じペースで続ける」という心構えが大切です。

■第5章 職場復帰前のメンタルチェック
休職中の方にとって、職場復帰は大きな不安を伴うイベントです。特に年末年始の休暇から復帰する場合、環境の急激な変化と季節的な気分低下が重なるため、準備が何より重要です。復帰を焦るあまり、現在の自分の状態を過大評価してしまう例も少なくありません。ここで大切なのは、自分の状態を冷徹に見つめ、必要に応じて復帰を延期する勇気です。

▼自分の状態を正確に把握する4つのポイント
復帰1週間前から、以下をチェックしてください。
①睡眠の質
夜間の睡眠は途切れやすくないか、朝目覚ましなしで起床できているか。不眠や過眠は気分悪化のサインです。

②食欲
毎食、食事をおいしく感じられているか。食欲低下は気分沈み込みの前兆です。

③気分の波
朝と夜で気分の波が大きくないか。特に朝の気分が深く沈み込んでいる場合は注意が必要です。

④通勤への不安度
通勤を想像したときの不安が「緊張」の範囲か、それとも「パニック的な恐怖」か。後者の場合は復帰延期を検討すべきです。

▼チェック後の相談プロセス
チェック項目で少しでも違和感や懸念を感じたら、休み前に必ず主治医に相談してください。「復帰予定だが、この点が気になっている」という具体的な相談により、医師は現実的なアドバイスや処方箋の調整を検討することができます。

その上で、なお不安が残る場合は、上司や産業医、人事などの会社の障害者雇用担当者など関係各所に相談し、短時間勤務や遅延出勤など、段階的な復帰の可能性を検討してください。「予定通りに復帰しなければ」というプレッシャーより、「自分の心身の状態を優先させる」という判断が、結果的に最短での完全復帰につながります。

▼無理な復帰は避けるべき理由
無理な復帰は、その後の長期休職につながるリスクがあります。焦りは禁物です。

【実践例】年末年始を乗り越えるための3つのシナリオ
パターン①「完璧主義に陥りやすい方へ」
年末の仕事もプライベートもすべて「完璧にこなさねば」と思い込んでいませんか?そのような状況でしたら、思い切って「80点で十分」という考え方に切り替えてみましょう。完璧を目指すのではなく、「続けること」に重点を置いてください。気分の落ち込みが感じられたときこそ、基準を下げることが大切です。年末年始は環境が特別な時期。完璧さを求めるのではなく、「今の自分にできることをやる」という柔軟性を心がけましょう。

パターン②「家族や親戚との関わりで疲弊しやすい方へ」
年末年始の親戚との集まりや忘年会で気が進まない場合、無理して全時間参加しようとしていませんか?そのような状況でしたら、事前に家族に「体調の都合で途中で失礼させてもらいたい」と相談してみてください。自分のペースで参加・退出することで、精神的な負荷を大幅に軽減できます。「全員と同じ時間いなければならない」という思い込みを手放し、自分の心身を優先させる判断が重要です。

パターン③「休み後の通勤ストレスが大きい方へ」
新年の職場復帰に向けて、通勤による体力消耗が懸念される場合は、可能な限り職場に相談してみましょう。例えば、新年の出勤日を数日短縮してもらう、リモートワークの活用、または段階的な出勤増加などが考えられます。自宅で朝日を浴びながら仕事を始めることで、通勤ストレスと季節性の両方を軽減できます。焦らず、段階的に通常勤務へ移行することが、スムーズな復帰を実現させます。

■終章:年末年始は「試練」ではなく「チャンス」
年末年始が辛い季節であることは事実です。しかし、これは「失敗」ではなく、自分の心身の仕組みをより深く理解する貴重な機会でもあります。

この時期に「何が自分を落ち込ませるのか」を観察することで、その後のセルフケアがより効果的になります。また、サポート体制(医師、支援者、職場、家族)の課題が明らかになれば、それを改善する糸口になります。

▼「他人と比べない」ことの大切さ
しかし、同時に重要な気づきがあります。年末年始に気分が沈む方の多くが、無意識のうちに「自分と他人を比較している」という事実です。充実した年越しをしている人、成長を遂行できた人、家族とうまくいっている人—そうした他者の姿と自分を比べることで、症状はさらに悪化します。

隣の芝生は確かに青く見えるかもしれません。しかし、あなたの視線を少し下ろしてみてください。自分の足元、自分の周りには、ひっそりと咲いているお花があるはずです。他人の庭ではなく、自分の庭に咲くお花に目を向けることが大切です。それが、たとえ小さな変化であっても、それはあなたの人生において確実な成長なのです。

重要なのは「完璧な新年」を迎えることではなく、「自分のペースで続けられる新年」を作ることです。あなたの気分が落ちるのは、頑張りが足りないからではなく、季節と環境という客観的な要因が関わっているからです。その現実を受け入れ、丁寧に対策することが、最も現実的で希望的な道筋です。

もし一人で抱え込みそうになったら、医師、福祉事務所、精神保健福祉センター、障害者転職エージェントなど、相談できる窓口があることを思い出してください。あなたは一人ではありません。

年末年始を通じて自分をより知ること、そして他者との比較から解放されること。それが新年への最高のプレゼントになるはずです。完璧さを求めるのではなく、自分のペースを大切にする。そうした小さな積み重ねが、やがて真の意味での「新年」へとあなたを導いていくのです。
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※本コラムの内容は2025年11月時点の情報に基づいています。
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