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障害を「クローズで働く」 VS 「オープンで働く」 ——あなたの「正解」を見つけるために
先日、手帳取得を検討中の30代男性からこんな相談を受けました。「障害を公開して働くか、隠して働くか...どちらを選べばいいんですか?」その言葉の奥底に感じたのは、単なる迷いではなく、「どちらを選んでも、何か大切なものを失うのではないか」という深いジレンマでした。その質問を受けた瞬間、私は改めて気付かされました。これは多くの障害のある方が直面する、人生戦略に関わる大事な選択肢なんだということを。クローズで働くべきか、オープン就労(障害者雇用)で働くべきかという問いに「絶対的な正解」はありません。ただし、判断基準は存在します。そして、その判断基準を持つことが、あなたのキャリアを大きく左右することになるんです。

■クローズ就労とオープン就労(障害者雇用) ——二つの働き方の違いを理解する
まず、言葉の定義を整理しましょう。
オープン就労(障害者雇用)とは、採用時点で企業に「障害がある」「手帳を持っている」という事実を明かして働くことです。企業側は、あなたが障害のある人材であることを認識した上で雇用契約を結びます。この場合、企業は「障害者雇用」という枠組みの中であなたを受け入れることになります。つまり、「障害があることを前提として、働く」という形式です。
一方、クローズ就労(障害を会社に報告・共有しないで働くスタイル)とは、採用時に障害や手帳の存在を明かさずに働くことです。企業側は、あなたを健常者と同じ職員として認識し、扱うことになります。つまり、「障害があることを隠して、健常者と同じように働く」という形式です。この場合、職場の誰もあなたが障害を持っていることを知らないため、障害に基づく配慮を受けることは基本的にはできません。
この二つは単なる「障害の公開/非公開」の違いではなく、あなたの職場環境、キャリアパス、受ける配慮、そして心理的な負担までもが大きく異なる選択肢となります。
簡単にいえば、オープン就労(障害者雇用)は「障害があることを前提に、配慮を受けながら働く道」、クローズ就労(障害を会社に報告、共有しないで働くスタイル)は「障害があることを隠して、健常者と同じ評価を受ける道」ということです。

■オープン就労(障害者雇用)のメリット ——配慮と心理的安全性の確保
オープン就労(障害者雇用)を選択した場合、どのようなメリットが得られるでしょうか。
最大のメリットは、配慮を受けやすいということです。体調が悪いとき、業務が難しいとき、あなたの障害特性に合わせた配慮や対応を企業側に求めることができます。「実は今日は調子が悪くて、このタスクは難しいんです」と正直に伝えられる環境があります。これは心理的安全性そのものであり、障害者雇用の最大の利点なんです。
ここで、具体的に考えてみてください。もし、あなたが気分系の障害(双極性障害、うつ病、統合失調症など)を持っていたら、どうでしょう。オープン就労(障害者雇用)であれば、気分の波に対応した働き方ができます。「今週は調子が良いので、難しい案件を担当します」「来週は調子が悪い可能性があるので、ルーチン業務をお願いします」など、こうした柔軟な対応が可能になるのです。合理的配慮がなければ、気分の波に翻弄されながら一定のパフォーマンスを求められ続けることになります。これは、人によっては大きな心身の消耗につながります。
また、発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症など)の場合はどうでしょうか。オープン就労(障害者雇用)であれば、タスク管理の方法やコミュニケーションの取り方、業務環境の調整など、細かな配慮を求めることができます。たとえばADHDの場合、メール確認の時間を限定する、タスクを細分化する、フィードバックを頻繁に受けるといった合理的配慮を求めることができます。もしもこれらの配慮が受けられなければ、「普通の人ならできるのに」という自責感の中で業務を進めることになり、ミスも増え、信頼を失うリスクが高まるかもしれません。
また、身体障害(内部障害)の場合も同様です。定期的な通院が必要な場合、オープン就労(障害者雇用)であれば通院時間の確保や業務スケジュールの調整などが配慮されます。さらに、自己免疫疾患により体調が変動しやすい場合も、その変動に合わせた働き方を企業側に求めることができます。オープン就労(障害者雇用)であれば、これらの合理的配慮が企業側に義務付けられるのです。もしも配慮がなければ、身体的な負担が増し、仕事そのものが進まなくなる可能性も考えられます。
オープン就労の場合、あなたの健康状態がある程度の範囲で認識されているため、「障害がいつバレるのか」という不安を抱え続ける必要がありません。人事評価についても、あなたの能力と障害特性の両方を考慮した上での評価になります。
他のメリットとしては、困ったときの相談先が明確という点が挙げられます。人事部や上司、産業医、外部の支援機関など、これらが全て機能する環境が用意されていることもあります。そのため、精神的な負担が増えたとき、「実は障害がある」と後から打ち明けるよりも、サポート体制が厚くなるという特徴があります。

■オープン就労(障害者雇用)のデメリット ——「障害者雇用枠」という天井
オープン就労は、必ずしもメリットばかりではありません
採用選考の段階で、「障害者雇用枠」として区別されるという現実があります。すなわち、あなたの能力や適性に加えて、「障害がある」という事実が良くも悪くも考慮されることになります。その結果、本来のあなたの実力以下の職場環境に配属される可能性もあります。
また、昇進・昇給での「天井」が存在する可能性は否定できません。企業によっては、「障害者雇用枠で採用した人材には、管理職は難しい」という慣行を持つところもあるかもしれません。これはあなたの能力とは関係なく、制度上の問題として立ちはだかります。
職場での心理的プレッシャーもあります。「障害者だから配慮してもらっている」という申し訳なさや周囲の期待値が低く設定されることへの葛藤、あるいは逆に「障害があるのに頑張ってる」という過度な賞賛を受けることの違和感など、これらが働き続ける上での大きな負担になるケースもあります。さらに、本人が予期しない「障害者雇用」扱いを受けることもあります。能力ベースで昇進を狙っていたのに制度的な制限で断られるというケースや、報酬体系が一般職と異なるケースなど、こうした現実に直面することがストレスにつながる場合もあります。

■クローズ就労のメリット ——能力ベースの評価と自由
クローズ就労(障害を会社に報告、共有しないで働くスタイル)を選択した場合の最大のメリットは、能力ベースでの評価を受けられることです。企業側は、あなたを「健常者の一員」として認識・評価します。昇進も昇給も、あなたの成果と能力次第です。すなわち、他の従業員と同様のキャリアパスが開かれています。
これは、キャリア形成の観点から見ると公平そのものです。将来的に管理職になることも専門職として活躍することも、可能性として等しく存在しています。オープン就労(障害者雇用)では「障害者だから難しい」という天井に直面するのに対し、クローズ就労(障害を会社に報告、共有しないで働くスタイル)ではそうした制限が(制度上は)ありません。
「普通の人として働いている」という心理的な感覚も、人によっては大きなメリットです。障害を理由とした低い期待値を受けることなく、一般的な職員と同じ土俵で戦えることを「自由」と感じる人も多いのです。

■クローズ就労のデメリット ——覚悟と環境が揃わなければ、消耗は加速する
クローズ就労のデメリットとしては、たとえば配慮がないまま働く苦労が大きいといった点などがあります。体調が悪いときや精神的に落ち込んでいるとき、またはあなたの障害特性が仕事に影響を及ぼすときなど、相談することが難しいケースもあります。いわゆる「普通に働いている人間」として振る舞い続けなければならない心理的負担は、人によっては大きなものとなります。
体調悪化時の対応も、自己責任となる点に注意が必要です。「実は調子が悪いから休みたい」といいづらい環境で、どのように体調管理をするのかという課題があります。医者にかかるにしても、仕事に支障が出ないようにする必要があります。これは、健常者が経験する「有給休暇」の気軽さとは異なるものです。
具体的に考えてみてください。もし、あなたが気分系の障害(双極性障害、うつ病、統合失調症など)を持っていてクローズで働いていると突然、気分が落ち込む週が来たとします。そんな中、毎日「大丈夫です」と言いながら仕事をする心理的負担は、配慮を受ける場合よりも大きくなりがちです。時間とともにその負担は蓄積され、やがて心身の大きな不調につながる可能性もあります。
また、発達障害でクローズ就労(障害を会社に報告、共有しないで働くスタイル)している場合、ミスの理由や原因が周囲に理解されづらく、評価が厳しくなる可能性もあります、「何度も同じミスをしている」「指示を理解できていない」といった状況が単なる「能力不足」として捉えられ、配慮の対象にはなりません。合理的配慮があれば防げるようなミスも、配慮がないことで繰り返されてしまうケースも考えられます。それにより、評価は下がり続けることもあるかもしれません。
さらに、身体障害(内部障害)でクローズ就労している場合、日常的な困難に直面することも多くあります。たとえば、自己免疫疾患により頻繁に風邪をひきやすい場合、「なぜこんなに休むのか」と疑問に思われることもあります。あるいは、定期的な通院が必要な障害がある場合、「業務に支障が出ている」と思われることを恐れて通院時間を必要以上に短縮したり、医学的に必要な治療を後回しにしたりすることもあるかもしれません。これらの配慮や理解がない環境では、身体の状態はさらに悪化するリスクが高まります。こうした身体的・医学的な困難が、日々蓄積されることになります。
そして「いつかバレるリスク」という不安も、常に付きまといます。ミスをしたときや体調が悪いとき、または転職するときなど、あらゆる場面で「障害があることがバレたら、どうしよう」という心理的プレッシャーを抱え続けることになるのです。このストレスは、想像以上に心身の負担となるかもしれません。
さらに、相談できない孤立感も生まれてしまいがちです。仕事の課題や人間関係の悩み、体調面での不安など、その全て一人で抱え込むことになりかねません。配慮を受ける環境がない状態で、障害特性を持ちながら働き続けることの精神的負担は、オープン就労(障害者雇用)よりも大きなものとなります。そして、職場での人間関係にも影響を与えるようになります。「何で休むんだろう」「何でミスをするんだろう」といった周囲の疑問が、やがて不信感に変わることもあります。こうした課題から生じる「心身の消耗」が、クローズ就労の大きなデメリットといえます。合理的配慮がないまま働き続けることは、見た目には「普通に働いている」ように見えても、内面では大きな負荷がかかっている場合があります。

■優先順位と戦略性
ここで、私の個人的な意見をお伝えしたいと思います。
心身と経済の余裕、信頼できるサポート体制があれば、クローズ就労は十分可能です。実は、障害のある方々からの相談を数多く受けてきた中で、環境さえ整えば、クローズでも十分にキャリアを構築できることを知っています。しかし、ここが重要なポイントなのですが、基礎疾患がある方々だからこそ、優先順位を考える必要があります。
まず、第一優先すべきことは、オープン就労(障害者雇用)で「制限のない職域・条件」を求める企業を探すことです。ここでいう「制限のない」とは、つまりは健常者と同じような職域、同じような評価基準、同じような給与・昇進の道が開かれている企業を探すことです。
「障害者雇用枠」という限定的な枠組みに捉われるのではなく、「障害があっても、能力ベースで評価してくれる企業」を見つけることが、実は最も理想的な働き方です。そうした企業が見つかれば、それはオープン就労(障害者雇用)でありながら、クローズと同等の自由度を持ったキャリアが築けるということです。
しかし、現実的には見つからない場合もあります。そのとき初めて、クローズ就労を視野に入れるという選択肢が浮上します。ここが重要なのですが、この場合のクローズ就労は、単なる「現実逃避」ではな、戦略的な選択であるべきです。
そして、ここには着目すべき可能性が隠されています。
クローズでキャリアを積んだ後、人生のあるステージでタイミングを見て「実は障害を持っていた」ということを伝えることもできます。その時点では、あなたは既に実績を積んでいます。企業側も、あなたの能力と仕事ぶりを既に知っています。
その瞬間、企業側はあなたの雇用を継続しながら、同時に障害者雇用率の確保にもつながります。そう考えると、むしろ企業側も「ラッキー」と感じるかもしれません。つまり、クローズ就労が単なる「隠蔽」ではなく、戦略的な選択肢になり得るということです。
ただし、注意点があります。初めからクローズ就労が「悪い選択肢」では決してありません。あなたの人生の段階、環境、心身の状態、経済状況によっては、クローズから始めることが正解の場合も十分あります。大切なのは、その選択が「戦略的」であり、「覚悟と準備」を伴っているかどうかです。

■では、あなたはどちらを選ぶ? ——深く考えるべき問い
以下では、「どちらを選ぶべきなのか」の判断基準になりうる自身への問いをいくつか提示したいと思います。
「体調が悪くなったとき、職場に相談できる環境がありますか?」
これは、クローズ就労とオープン就労(障害者雇用)を判断する上で重要な問いです。相談できる環境がない場合、配慮を受けられないクローズ就労は負担の解消などが難しくなります。
「働けない期間が生じても、経済的に耐えられる余裕はありますか?」
クローズ就労を選択した場合、体調悪化時の対応は全て自分で判断し、自分で責任を取ることになります。そうした局面で、経済的な余裕がなければ選択肢はさらに狭まります。
「5年後、10年後のキャリアイメージを想像したとき、クローズ就労とオープン就労のどちらが現実的(有利)ですか?」
キャリア形成の長期的視点は、選択を大きく左右します。昇進を望むのであればどちらが現実的か、また起業を視野に入れているのであればどちらが有利かなど、こうした視点から逆算的に考えることも重要です。
「あなたの障害の特性上、職場での配慮は「あると助かる」レベルですか、それとも「必須」レベルですか?」
配慮が必須なのにクローズ就労することは、大きな負担が生じることになります。そのため、自身の障害や症状を踏まえた上で選ぶ必要があります。
これらの問いに、正直に向き合い、自分の状況を冷徹に見つめることが、判断の第一歩となります。

■転換の可能性 ——働き方は、一度きりではない
あなたが選択したクローズ就労やオープン就労は、「一度決めたら変更できない」というものではありません。人生のステージが変わるときや体調が変わるとき、または職場環境が変わるときなど、あなたは何度でも選択を変更することができるのです。この柔軟性こそが、人生戦略において大切なことです。最初はオープン就労で始めたが、昇進など狙うために制限を無くすためにクローズへ転換することもあるかもしれません。逆に、クローズ就労で頑張ってきたけれど、体調が悪化したので配慮を受けるためにオープン就労へ切り替えるというケースも考えられます。
なお、切り替える際にはいくつかの注意点があります。給与交渉や配慮の申告タイミング、職場での信頼関係の構築など、これら計画的に進める必要があります。特にクローズ就労からオープン就労への切り替えは、事前の準備が重要です。
クローズ就労からオープン就労への切り替え時には、あなたはすでに手帳を保持しながらその企業で成果を出した実績を持っています。つまり、「障害があってもこの人は成果を出せる」という確かな評価が企業側にあるわけです。その評価があるからこそ、企業側も配慮をしやすくなるのです。そして、その瞬間に障害者雇用率を確保できるという企業側のメリットも生まれるわけです。

■最後に ——「正解」ではなく、「最適」を信じる
「正解」を求めてはいけません。「今のあなたに最適な選択」を信じてください。
あなたの状況は、他の誰かとは違います。年齢も経済状況も違えば、障害特性も違います。それらを踏まえた上で、あなたが選んだ選択こそが「最適」なのです。
障害があると、症状や状況は時間とともに変わります。だからこそ、「今、この瞬間のあなたに最適な選択」にフォーカスすることが重要です。その時々で最善と思える選択をすことの積み重ねが、実は明るい未来へ繋がっていくのです。
迷ったら、医師やカウンセラー、または信頼できる人に相談してください。必要であれば、障害者転職エージェントハッピーにもご相談ください。
あなたの人生戦略は、あなたが主人公です。その選択が「戦略的」で「強い意志」を伴ったものであれば、その瞬間から、あなたの人生はさらに輝き始めるのです。
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【お問い合わせ・相談窓口】
▼障害者転職エージェントハッピー
・運営:ライフィング株式会社
・特徴:障害者専門の転職エージェント、精度の高いマッチングと丁寧なサービスが特徴
障害者転職エージェントハッピーの現場責任者として、多くの方の「違い」を「強み」に変える支援を行う。「あなたらしい働き方の実現」をモットーに、一人ひとりの可能性を最大限に引き出すキャリアサポートを提供しています。
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※本コラムの内容は2025年12月時点の情報に基づいています。
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