今こそアップデート!障害者雇用は人的資本経営の最前線へ
こんにちは。障害者転職エージェントハッピーの丹羽です。
今回は、障害者雇用と人的資本経営の最前線についてお話しします。現在、多くの企業が「法定雇用率の達成」を障害者雇用のゴールとしているのが現実です。しかし、本当にそれだけでよいのでしょうか?
企業にとって"意味のある雇用"とは何か──その視点から、令和時代にふさわしい障害者雇用のあり方を考えてみたいと思います。障害者雇用というと、制度の枠組みを守るために"とりあえず雇う"というスタンスも、いまだ少なくありません。いわば「数合わせ」が目的化してしまっている状態です。しかし、企業を取り巻く環境は確実に変わりつつあります。近年注目されている"人的資本経営"の考え方では、従業員一人ひとりが企業価値を生む"資本"とみなし、その力をどう活かすかが問われています。障害者雇用もその例外ではありません。今求められているのは、制度対応ではなく、"人を活かす経営"の一環としての障害者雇用です。特に首都圏 障害者採用 支援の現場では、DE&I(※多様性:Diversity・公平性:Equity・包摂性:Inclusion)の推進の観点から、より戦略的で持続可能なアプローチが重要視されています。

人的資本経営とは──“人を資本と見る”経営への転換
人的資本経営とは、従業員を単なる労働力ではなく、企業価値を生み出す"資本"と捉える考え方です。スキルや経験はもちろん、意欲、健康状態、価値観、人間関係といった目に見えにくい要素まで含めて、企業の未来を支える大切な資源としてとらえ、それらをどう引き出し、活かすかを経営の中心に据えます。
これは「人材育成」や「福利厚生」といった単発的な施策ではなく、企業の競争力そのものに直結する経営の思想そのものの転換です。従来のように「人件費=コスト」と見るのではなく、「人への投資=成長力」と捉え直すことで、組織のあり方やマネジメントの本質も変わっていきます。
近年では、ESG投資の流れの中で人的資本の重要性は世界的に高まり、日本国内でも経済産業省が企業に対して可視化・情報開示を強く促しています。国の制度対応としての側面もありますが、実際にはこれから企業が生き残れるかどうかを左右する"生存戦略"のテーマです。
そして今、その問いに真正面から向き合おうとすれば、多様性と向き合わざるを得ない時代に来ています。性別、年齢、国籍、働き方の志向、そして障害の有無を含めて、「どんな人が、どんな条件下で力を発揮できるのか」を、組織がどれだけ解像度高く理解し、かつ現実に落とし込めているかが問われています。今後は「どんなビジネスをするか」以上に、「どんな人材が集まり、どれだけその力を引き出せているか」が、企業の成長を左右する軸となっていきます。人的資本経営とは、その真価を見極めるための"経営の物差し"ともいえるでしょう。"誰でも同じように働ける"という前提ではなく、"この人だからこそ活かせる"という視点に立ったとき、人的資本経営は単なる理念ではなく、現場で活きる実践知へと変わり、企業の競争力そのものに直結していきます。

ESG投資とは…
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)といった非財務的な観点を重視して行われる投資のことです。財務情報だけでなく、企業の持続可能性や社会的責任への取り組みも評価対象とされ、近年は世界的に重要性が高まっています。
適材適所が“戦力”を生む――マイクロな視点が鍵になる障害者雇用
障害者雇用に対しては、「配慮が必要=即戦力にはなりにくい」という先入観がいまだに存在します。ですが、実際にはその逆です。活躍している障害のある方の多くは、非常に解像度の高いアセスメントとマッチングを経て配置されています。
たとえば、自閉スペクトラム症(ASD)のある方は、ルーティン業務やデータ検証において非常に高い集中力と正確性を発揮します。口頭での曖昧な指示や突発的な変更には弱い一面もありますが、業務を視覚化し、安定したフローを設計することで、精度の高いアウトプットを継続的に出せるようになります。
ADHD傾向のある方は、複数タスクの同時進行やアイデア創出に強みを持ち、創造性が求められる業務で健常者以上の成果を出すケースもあります。また、聴覚障害のある方は、騒音に煩わされずに作業へ集中できる環境で高い生産性を見せることが多く、チャットや視覚情報での指示が整えば、円滑な業務遂行が可能です。
さらに、精神障害(うつ病、双極性障害、不安障害など)を持つ方の中には、体調の波を理解し、無理のないペースで働ける環境を整えれば、非常にロジカルかつ丁寧な業務遂行や、高い洞察力・共感力を活かして信頼を得る方もいます。感情の機微に敏感な分、顧客対応や組織内調整で力を発揮するケースも多くあります。その力を継続的に活かすためには、状態の変化に気づけるよう、日頃から気軽に話せる時間や1on1面談などの"対話の場"を設けておくことが大切です。無理を抱え込まずにすむ環境づくりが、活躍と定着率向上 障害者雇用のカギになります。
このように、スキルベース採用(能力重視の評価)の観点から、スキルだけでなくパーソナリティーまで含めたマイクロな視点での人材理解と配置設計が、適材適所を可能にします。そしてそれが、分野によっては健常者以上の成果を引き出すことにもつながるのです。

未来の働き手をどう確保するか?――人的資本確保の核心としての障害者雇用
日本の労働人口は、今後ますます減少していきます。2040年には約1,100万人の労働力が不足するともいわれており、企業にとって人材の確保は、事業継続そのものを左右する経営課題です。こうした中、注目すべきなのが潜在的に就労可能な障害をお持ちの方々です。
現状、多くの障害のある方は、働く意欲がありながらも、職場環境や業務設計が整っていないために、能力を発揮する機会を得られていません。この"眠れる人的資本"に着目し、丁寧にマッチングし、活躍の場をつくることが、人材難時代における競争優位性の源泉にもなります。
障害のある方が職場に加わることで、組織の"当たり前"が問い直されます。視覚・聴覚障害の社員が情報共有の設計を見直すきっかけとなったり、業務の前提が変わることでユニバーサルデザインや合理化が進んだりと、新しい問いと仕組みが生まれる余地が広がるのです。
そして特に注目すべきは、障害者雇用を通じて組織内のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が可視化されることです。「普通はこう」「これくらいは察して当然」といった前提は、障害のある方にとっては壁になります。しかしこれは、Z世代やミレニアル世代など、多様な価値観を持つ若手社員にとっても同様で、疎外感を生む要因になり得ます。アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に気づき、ルールや伝え方、評価の基準を見直すことは、あらゆる世代・属性の社員にとって心理的安全性(安心して発言できる職場環境)の高い職場づくりにつながり、離職の防止にも寄与します。つまり、障害者雇用は「人手不足への対応」という枠を超え、職場文化を見直すきっかけとなり、組織の包摂力(インクルージョン)や変化への対応力を高める起爆剤になり得るのです。現代では、都内を中心にハイブリッドワーク(在宅×出社の組み合わせ)を導入する企業も増えており、多様な働き方に対応できる柔軟性がエンゲージメント向上(従業員満足度・定着率改善)に直結しています。

「戦力」として迎える覚悟を、今この新しい時代で
私たちは今、"人的資本"が経営の中心テーマとなる新しい時代に立っています。ダイバーシティ(多様性)、インクルージョン(包摂性)、そしてサステナビリティ(持続可能性)。これらが表層的なスローガンではなく、経営そのものの根幹に据えられる時代です。その中で障害者雇用にどう向き合うかは、企業がどれだけ本気で"人"(従業員)と向き合っているかを問う試金石となります。「制度だから雇う」のではなく、「どうすれば活かせるか」と考える。この発想の転換こそが、人的資本経営の第一歩です。
特に注目したいのは、ニューロダイバーシティ(脳の多様性への理解)の概念です。発達障害をはじめとする神経学的な違いを、単なる「配慮が必要な特性」ではなく、「異なる強みを持つ多様性」として捉える視点が、イノベーション創出の源泉にもなり得ます。インクルーシブリーダーシップ(包摂的なマネジメント)の実践により、多様な人材が安心して能力を発揮できる環境を整えることが、これからの競争力の鍵となります。私たち障害者転職エージェントハッピーでは、障害特性や個々の強み・働き方の希望を丁寧にアセスメントした上で、企業との最適なマッチングをご提案しています。単なるご紹介にとどまらず、就業後も現場での定着や活躍を見据えたフォローを継続的に行い、"雇用"から"戦力化"への確かなステップを共につくることを大切にしています。
また、リスキリング(既存スキルの再教育)の観点からも、障害のある方への継続的な成長支援は、長期的な人材投資として大きな価値を生み出します。障害者雇用を、制度対応ではなく経営の一環として前向きに捉えたい――そんな想いをお持ちの企業の皆さまに、少しでもお力添えできましたら幸いです。障害者雇用を"人的資本"として捉えることは、これからの企業にとって、未来を育てる確かな選択のひとつです。まずは、社内で『障害者雇用の現状と理想』をテーマに、現場の声を聞く対話の場を持ってみてください。それが、組織の文化を見直す第一歩になるはずです。小さなことでも構いません。どうぞお気軽に、障害者転職エージェント「ハッピー」までご相談ください。
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