リワーク経験者の採用メリットとは?人事が知るべき障害者雇用の新戦略 | 障害者転職エージェント ハッピー


リワーク経験者の採用メリットとは?人事が知るべき障害者雇用の新戦略


「リワークという言葉を、聞いたことありますか?」

人事担当者の皆様とお話しする中で、この質問をすると「聞いたことはあるけれど、詳しくは...」「復職支援のことですよね?」といった反応をいただくことがあります。リワークは障害者雇用を進める上での選択肢のひとつであるものの、具体的な仕組みや企業にとってのメリットについては十分に理解されていないといえます。

リワークは本来、休職された方が元の職場へ復帰するための支援プログラムを指します。しかし、プログラムを通して自身の特性やキャリアと深く向き合った結果、再発防止や更なる活躍のために、元の職場に戻るのではなく、新たな環境へ「転職」するという前向きな選択をされる方もいらっしゃいます。

法定雇用率が段階的に引き上げられ、2026年度には2.7%となる中で、多くの企業が「質の高い障害者人材をどのように確保するか」という課題に直面しています。そんな中、リワーク経験者の採用は、即戦力となる人材確保と高い定着率を実現できる非常に有効な手段となっています。

今回は、「リワークプログラムの経験を経て、新たな活躍の場を求める人材」の採用に焦点を当て、リワークの基本的な仕組みから、企業が得られる具体的なメリット、そして連携方法まで、人事担当者の皆様に知っていただきたい情報を体系的にお伝えします。

第1部:リワークとは何か?なぜ重要なのか?
1.そもそも「リワーク」とは?
▼リワークの正式名称と目的
リワーク(Re-work)とは、うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調、または発達障害などが原因で休職した方が、安定して働き続けるための準備を行うプログラムの総称です。本来は元の職場への復帰(復職)を目指すものですが、近年その役割は広がっています。

プログラムを通じて自己理解を深める中で、必ずしも元の職場に戻ることだけがゴールではなく、ご本人の希望や適性に応じて、より力を発揮できる新天地への「転職」を目指すケースも増えています。そのため、再発防止のためのセルフケア能力向上や就労スキルの回復だけでなく、新たな職場への就職活動準備まで、幅広い支援が含まれています。

▼「就労移行支援」と「自立訓練(生活訓練)」の相違点
人事担当者の方からよくいただくご質問のひとつが、「就労移行支援とリワークは何が違うのか?」というものです。

就労移行支援は、主に本格的な就労経験がない方(または長期にわたって就労から離れていた方)を中心に、就職に向けた職業スキルの習得、企業実習、就職活動サポートなどを行います。しかし、就労移行支援事業所によっては復職のためのプログラムを実施しているところもあり、この点で「リワークを行っている」と位置づけられることもあります。就労移行支援事業所で行うリワークでは、既に職歴がある方の復職・転職支援、特に再発防止に特化したプログラムなどが行われます。

一方、自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が地域で自立した生活を送るための基盤づくりを目的としています。生活リズムの安定化やストレス管理、基本的な社会生活スキルの習得など、就労以前の土台となる部分に重点を置いたプログラムです。自立訓練(生活訓練)事業所でも復職を目指すためのサポートとして「リワーク」が行われることがあるため、「リワークを行っている」という点では就労移行支援事業所と自立訓練(生活訓練)事業所に大きな違いはないという捉え方もあります。

▼就労移行支援とリワーク
就労移行支援を利用される方は本格的な就労経験がない方や職種変更を希望する方が中心ですが、リワーク利用者は過去に正社員として働いた経験を持つ方がほとんどです。営業職、システムエンジニア、管理職など、具体的な職業スキルと実務経験を有しています。

就労移行支援では基本的なビジネスマナーやパソコン操作から始まる幅広い就労準備が行われますが、リワークを行っている事業所では既存のスキルを前提としてメンタルヘルス管理やストレス対処法、または再発防止策の習得になどに重点が置かれます。他にも、認知行動療法に基づいたプログラムや職場での人間関係構築など、より専門的で実践的な内容が中心となることも多くあります。

企業側から見ると、就労経験のない就労移行支援経由の方は入社後の研修期間を長めに設定し、基礎スキルから段階的に習得していただく必要があります。一方、(※就労移行支援事業所・自立訓練(生活訓練)事業所を問わず)リワーク経験者は、既存スキルを活かしながら必要最小限の環境調整で即戦力として活用できる可能性が高くなります。

2.なぜ今、人事がリワークを知るべきなのか?
▼変化する障害者雇用市場の現実
障害者雇用市場において、精神障害者の占める割合は年々増加しており、全体の約半数を占めるまでになっています。そんな中、うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調による休職・退職経験者の中には、優秀なスキルと豊富な経験を持つ方が多数いらっしゃいます。

現在は、従来の「障害者雇用=軽作業」という固定観念から脱却し、多様な人材を戦力として活用する企業が競争優位を築く時代に入っています。リワーク経験者の採用は、この流れの最前線に位置する人材確保戦略といえるでしょう。

第2部:リワーク経験者採用のメリット
リワーク経験者の採用には、次のようなメリットがあると考えられます。
▼1.即戦力人材の確保
リワーク利用者の多くは正社員経験があり、営業、事務、IT、管理業務など様々な分野の実務経験を保持しています。新卒採用や未経験者採用と比較して、研修期間の短縮や即戦力としての活用が期待でき、人材育成コストの削減にもつながります。

▼2.高い自己管理能力
リワーク施設によっては、リワーク期間中に自己分析や体調管理、ストレス対処法、時間管理、コミュニケーション技術などを体系的に学びます。そのため、復職(=採用)後は再休職の心配も少なく、長期にわたって安定的に就労することが期待できます。

▼3.法定雇用率達成への確実な貢献
2026年度に法定雇用率が2.7%に引き上げられる中、リワーク経験者は障害者手帳を取得している方が多く、法定雇用率のカウント対象となります。高い定着率により短期退職のリスクを軽減でき、安定的な雇用率維持が可能になります。

第3部:採用にあたってのポイント
▼リワーク施設の理解
リワーク経験者を採用するにあたって、まずはリワーク施設の特徴を理解することが重要です。

たとえば、就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)事業所では、以下のような特徴があります
・対象:うつ病・適応障害などのメンタル不調、発達障害、双極性障害、統合失調症など
・プログラム:健康管理やビジネススキルなどの体系的なカリキュラム

施設には利用者からの問い合わせだけでなく、企業の人事担当者や保健師などからの問い合わせもあります。

▼リワーク施設への採用活動のメリット
企業が自社の障害者雇用率を高めるために、就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)事業所と連携して採用活動を行うケースはめずらしくありません。これらの事業所との連携は、従来のハローワークや転職エージェントに加わる新たな採用チャネルとなります 。事業所の支援員は利用者の特性やスキルを深く把握しているため、企業は自社にマッチした人材を見つけやすく、ミスマッチによる短期離職のリスクを軽減できます 。求職者側も、支援員を通じて自身の状況や必要な配慮を企業に正確に伝えてもらえるため、安心して選考に臨め、入社後の定着にも繋がりやすくなるというメリットがあります 。

これまでにみてきたように、リワークは本来、休職した方が元の職場へ復帰するための支援プログラムを指します 。そのため、一見すると企業の新規採用活動とは馴染まないように思えるかもしれません。しかし、この認識は変化しつつあります。リワークプログラムを通じて自己の特性やキャリアと深く向き合った結果、再発防止や更なる活躍のために、あえて元の職場に戻らず「転職」という前向きな選択をする方も増えています 。この「転職を選択したリワーク経験者」こそ、企業にとって非常に価値のある人材となり得ます。

利用者が元の職場に戻るか、転職を選ぶかは本人の意思次第です。しかし、転職を希望する方が出た際に自社が選択肢となれるよう、リワーク施設に求人情報を提示し、連携を築いておくことは、安定した障害者雇用と企業の成長を実現するための極めて有効な戦略といえます。

▼採用面接で押さえるべきポイント
リワークを経て転職活動をされている方の採用面接では、通常の面接項目に加えて、いくつかの重要な確認事項があります。まず体調管理の状況について、現在の体調が安定しているか、どのような体調管理を日常的に行っているか、ストレス対処法を具体的に身につけているかを確認することが大切です

次に就労への準備性の確認として、リワークプログラムでどのようなことを学んだか、週何日・何時間程度の勤務が可能か、段階的な勤務時間延長への対応は可能かといった点を確認します。併せて、職場環境で配慮が必要な点や通院の頻度と勤務への影響、他にもストレス軽減のために必要なサポートなどについて事前に把握しておくことが大切です。

面接時に注意すべき点としては、病気や症状の詳細、または再発可能性を深く尋ねることは避けるという点が挙げられます。プライバシーに配慮した質問を心がけ、前向きな姿勢と意欲を重視した面接を行うことが大切です。

▼受け入れ体制の整備方法
リワーク経験者を採用するにあたって、特別な設備投資や大幅な環境変更は必要ありません。既存の職場環境の中で、可能な範囲での工夫や調整を行うことが基本となります。

業務面では、段階的な業務量の増加、明確な業務指示と期限の設定、過度なプレッシャーを避ける業務配分を心がけることが大切です。人的サポート体制としては、経験豊富な先輩社員をメンターとして配置し、業務面だけでなく精神的なサポートも提供するといった方法があります。

月1回程度の定期面談により、体調や業務の状況を確認し、必要に応じて配慮内容を調整していきます。また、社内の産業医やカウンセラーと連携し、専門的な視点からのサポートを提供することで、より安定した就労継続が可能になります。

第4部:今日から始められるアクション
今すぐできる実践アクション
▼ステップ1:情報収集
自社の所在地周辺にあるリワーク施設について調べます。施設によっては企業との連携に注力しているところもあるので、この点を軸に探すと効率的です。

▼ステップ2:社内体制の確認
リワーク経験者を受け入れるための社内体制を確認します:
・配慮可能な職場環境
・メンター候補となる社員
・人事担当者の理解度向上

▼ステップ3:試行的な連携開始
まずは1名の採用から始めて、受け入れ体制や連携方法を実践的に学んでいきます。

▼ステップ4:継続的な改善
採用後の状況を定期的に評価し、より効果的な受け入れ方法を確立していきます。

第5部:リワーク活用で実現する持続可能な障害者雇用
リワーク経験者の採用は、単なる法定雇用率達成の手段ではなく、企業の成長戦略の一部として位置づけることができます。高いスキルと豊富な経験を持つ人材を、適切な配慮のもとで活用することにより、企業の競争力向上と社会貢献の両立が可能になります。

従来、多くの企業では障害者雇用において、障害者専門の転職エージェントやハローワークといった限られたチャネルに依存してきました。しかし、リワーク機関との連携を新たな採用チャネルとして検討することで、より安定的な障害者雇用率の実現に近づくことができます。リワーク機関は全国各地に展開しており、継続的に質の高い人材を輩出していることから、長期的な採用計画を立てやすいという大きなメリットがあります。

「リワーク」という選択肢を知らなかった人事担当者の皆様にとって、リワーク採用が新たな人材確保戦略を考えるきっかけとなれば幸いです。法定雇用率の達成と企業成長を同時に実現する、持続可能な障害者雇用の第一歩として、ぜひリワーク機関との連携をご検討ください。

障害者雇用に関するご相談やリワーク機関との連携についてご質問がございましたら、私たち障害者転職エージェントハッピーまでお気軽にご連絡ください。皆様の企業の成長と、一人でも多くの方の活躍を支援できるよう、全力でサポートさせていただきます。

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この記事を書いた人

JOME株式会社 代表取締役 山口徳二

山口 徳二やまぐち とくじ

JOME(ジョミー)株式会社 代表取締役/障害者転職エージェント「ハッピー」運営

身体障害者手帳5級を持つ障害当事者。障害者専門の転職エージェントに15年以上従事し、2019年に障害者転職エージェント「ハッピー」を創業。当事者としての実感と、人材業界での実務経験の両面から、障害者雇用を「義務対応」から「経営戦力」へ転換する支援を行っています。

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