障害者雇用の法定雇用率2.7%引き上げに対応 ── 今から準備すべき採用計画

■【第1部:不安編】 人事が感じている本当の不安とは
「2026年7月に法定雇用率が2.7%に引き上げされるんですか?うちの会社、対応できるんでしょうか?」
人事責任者からこんなお電話をいただくことが、最近、増えています。
「今でさえ障害者雇用率が未達なのに、今後どうすればいいのか…」
「採用スケジュールも決まっていない状態で、いきなり『障害者を採用してください』と言われても、正直、どうしたらいいか分からないんです」
「受け入れ体制も整っていないし、他部署との調整もあるし。困っています」
こうした本音を聞かせてくださる人事責任者は、本当に多いんです。
ただ、ここで大切なことがあります。こうした心配をされている人事さんほど、「大事なことだから、丁寧に対応したい」という誠実な姿勢を持っているんですよ。逆に「法定雇用率達成なんて簡単ですよ」と答える人事の方のほうが、採用後に苦労する傾向があります。なぜなら、障害者採用の本質は「数の達成」ではなく「適切な人選と、その後の継続的な支援」だからです。
この記事を読み終わるころには、その不安が「確実に達成できる」という確信に変わっているはずです。 なぜなら、2026年7月までの具体的なロードマップと、実際の企業の成功事例を、詳しくお示しするからです。

■【第2部:真実編】 数字から見える現実
2026年7月1日から、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられます。
「0.2ポイント?大したことないじゃないか」
そう思われる方も多いかもしれません。ですが、企業規模によっては、採用すべき障害者数が大きく増えるんです。
・従業員500名の企業:500名 × 0.2% = 1.0名
・従業員1,000名の企業:1,000名 × 0.2% = 2.0名
すなわち、従業員数が500名毎に、1名ずつ追加採用が必要になるということです。
企業の対応状況を見ると、課題を感じている組織は少なくありません。現在の法定雇用率達成に向けても多くの企業が試行錯誤の状態にあり、2.7%への引き上げに対しては、さらに多くの企業が対応に課題を感じているのが実状です。
「うちだけじゃないんだ」という安心感がある一方で、「だからこそ、今から準備する企業と準備しない企業で、大きく差がついてしまう」という現実もあります。
▼実は、採用は「準備で9割決まる」
障害者採用の実績を見ると、事前準備がほぼない企業と、しっかりした準備を行った企業では、従業員の定着率に大きな差が生まれています。
準備を行っている企業の取り組み:
採用前の社内教育、障害特性に合わせた業務アサイン、段階的な業務調整、定期的なフォローアップ、外部支援機関との連携など
このように準備に力を入れる企業と、そうでない企業とでは、定着率に大きな差が出ています。実は、「法定雇用率の達成が困難」という課題は、障害者採用そのものの難しさというより、準備不足が原因であることが多いんです。言い換えれば、準備さえ整えば、達成は十分可能だということです。

■【第3部:転換編】 「採用が難しい」から「採用できる」へ
「採用後の支援が大変なのでは?」
「職場にいると、他の社員に迷惑をかけるのでは?」
「そもそも、どこで採用できるのか分からない」
こうした懸念は、多くの人事責任者が抱く、ごく自然なものです。実は、これらの多くは「準備や情報がなかった」ことが原因なんです。
民間企業において、障害者の雇用実績は確実に増えています。これは、もはや「特例的な取り組み」ではなく、多くの企業が障害者を採用し、成功させているという証です。さらに、2024年4月の改正により、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者も、雇用率の対象に含められるようになりました。つまり、以前よりも柔軟な雇用形態での採用が可能になったのです。
▼優良企業が共通して実践していること
障害者雇用に積極的に取り組んでいる企業では、さまざまな機関や専門家などを活用しています。
①ハローワークの障害者雇用支援窓口
各ハローワークには障害者専門の窓口があり、採用計画の立案から採用後の定着支援まで、一貫したサポートを受けられます。「どんな職種が採用しやすいか」「給与相場はいくらか」といった現実的な相談も可能です。障害者の就職希望者情報も提供されるため、採用媒体費をかけずに人材情報を得ることが可能です。利用料は、原則無料です。
②障害者雇用に関する相談援助(2024年4月より原則無料)
2024年4月から始まった、厚生労働省認定の専門家によるコンサルティング支援です。採用前の準備から採用後の定着支援まで、専門家が「採用計画の立て方」「面接での聴き方」「職場での配慮内容」など、実務的な相談に対応します。これは厚生労働省が認定した専門機関による支援で、採用に関する不安や判断に迷った際の相談相手として機能します。外部コンサルを雇わずに専門的なアドバイスが得られることは、特に中堅企業にとって大きなメリットです。
③職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
採用直後、ジョブコーチが職場に出向き、業務習熟と職場への適応をサポートします。通常は3~6ヶ月程度、週に数日のペースで訪問し、本人と職場の「橋渡し役」として機能します。本人の業務理解を深めるとともに、職場の同僚へのサポートも行うため、受け入れ側の不安も軽減されます。助成金対象となるため、企業の直接的な負担はほぼありません。
④転職エージェント・就労支援機関との協働
採用後も定期的にフィードバックを受け、問題が大きくなる前に対応できます。本人の「職場での悩み相談」の窓口としても機能するため、企業の人事負担も軽くなります。特に本人が職場でのストレスや悩みを相談できる外部窓口があることで、長期的な定着につながりやすくなるという傾向があります。
成功している企業は、「採用して終わり」ではなく「採用後のサポートを最初から計画している」という点が特徴です。こうした制度や支援機関を戦略的に組み合わせることで採用リスクを最小化し、本人の定着と企業の安定を同時に実現しているのです。

■【第4部:実践編】 2026年7月までに、企業が「決める」こと
ここまで読んでいただいた人事さんなら、答えはもう見えているはずです。ただ、スケジュール表を引いて「これをやりましょう」と言うほど、採用は単純ではありません。大切なのは、人事がどこで立ち止まり、どう判断するか。その思考の順番です。
(1)自社の立ち位置を知る
採用を始める前に、「今、うちはどの状況にあるのか」を、正確に見つめる時間が重要です。実雇用率、必要な追加採用人数、身体・知的・精神の内訳──この数字を把握することが、すべてのスタートラインです。
(2)経営層と「同じ地図」をつくる
採用計画を立てる前に、経営層に状況を共有することが重要です。「現在の実雇用率が2.4%で、2.7%達成には追加採用が必要。この課題は経営の課題である」と説明すれば、経営層にも「法的義務で、放置できない課題」と認識し、「多様な人材を活かす組織づくり」の重要性が伝わりやすくなります。
(3)受け入れ体制は「完璧さ」より「丁寧さ」と「心理的安全性」
受け入れ部署の管理職と同僚に丁寧に説明することが最重要です。「この方はこういう特性があり、こういう配慮が必要です」「指示はわかりやすく、確認しながら進めましょう」──こうした人から人への丁寧なコミュニケーションが、どんな立派な設備よりも効きます。
新しく組織に入ってくる誰もが、「この職場は、自分を信頼して、丁寧に見てくれるのだろうか」という問いを心の中に持っています。その問いに対して、「はい、私たちはあなたを大切にします」と、行動で示すこと。それが心理的安全性です。
(4)募集・面接では「強み」を見に行く
面接で本当に見たいのは、その人の「弱さ」ではなく、「この人はどんな環境なら力を発揮するのか」「どんな仕事に向いているのか」「過去の成功経験は何か」です。そして多くの担当者は、どこかで気づきます。「この人、実は強みが多い」と。
相手の強みを信頼し、安心して本来の力を発揮できるような環境を作ろうとする姿勢。それが、実は長期的な定着に最も影響するのです。
(5)採用後は「定着」がすべて
最初の3ヶ月は、ジョブコーチや支援機関のサポートを活用しながら、業務習熟を進めます。この時期、上司が丁寧に、根気強く関わることが、その後を大きく左右します。
ただし、重要なのは「指導の技術」ではなく、「向き合う姿勢」です。「この人を、組織の一員として信頼しよう」そうした決意を持って接すれば、言葉や態度に自然と温もりが生まれ、相手の心理的安全性を高めます。
4ヶ月目から1年にかけて少しずつ任せる範囲を広げ、本人の疲労度やメンタルを確認しながらペースを調整します。重要なのは、本人と職場の双方が納得できる無理のないペースで、丁寧に信頼関係を築いていくことなのです。
▼A社が教えてくれたこと
A社は、IT系の企業。約800名の従業員を抱える中堅規模で、2026年7月に2.7%を達成するには追加採用が必要でした。
人事部長がまず行ったのは、現状を正確に把握し、経営層に説明すること。ただし、その説明の軸は「コスト」ではなく「経営姿勢」でした。
「現在、法定雇用率を達成できていない。これは国の制度として定められた基準です。当社が多様な人材を活かす企業になるためには、ここを曖昧にすることはできません。同時に、障害者採用は、ママさんワーカーや外国人労働者と同じく、令和の雇用スタンダードの一部です」
この説明により、経営層は「これは『障害者対策』ではなく、『企業のあり方をアップデートする機会』なのだ」と認識しました。
その後、A社が進めたのは、特別な施策ではなく、ハローワーク相談、就業支援機関との連携、ジョブコーチの活用、管理職研修、丁寧な採用面接でした。
A社の事例で本当に大切なのは、その過程で起きた「変化」です。採用と定着を進める中で管理職のマネジメント観が更新され、組織全体の「多様性への向き合い方」が変わり、人事評価や配置の在り方が柔軟になりました。結果として、女性社員の活躍も、シニア人材の配置も、より自然に進むようになったのです。
つまり、障害者雇用は、単なる「法令遵守の施策」ではなく、「企業の人材観・組織観をアップデートするきっかけ」だったということです。

■【第5部:結論】──コンプライアンスは、企業の強みになる
「2026年7月の引き上げに対応できるか不安…」と感じていた方も、ここまで読んでいただければ、気づいたはずです。不安の正体は、決して「採用が難しい」ことではなく、「何から始めたらいいか分からない」という情報不足だったと。本コラムで示した通り、現状把握から採用、そして定着まで、一つひとつ丁寧に進めれば、2026年7月の達成は十分可能です。
障害者雇用率2.7%への引き上げは、決して「やらされる義務」ではなく、「企業のあり方を問い直すきっかけ」なのです。
労働環境の健全性が可視化され、評価される時代。働きやすさを整えている企業こそが、長く信頼され、人に選ばれていくのです。コンプライアンスを正しく守り、多様な人材を適材適所で活かそうとする企業は、発想力や視点が増え、結果として組織の生産性が高まる環境を実現しています。
障害者採用は、もはや「特別な配慮」ではなく、ママさんワーカー、外国人労働者、シニア人材と同じく、令和の雇用スタンダードの一部です。これらの多様な働き手を安心して受け入れられる企業が、これからの時代、長く人に選ばれ続けるのです。
労働人口が減少する時代、企業は「選ぶ側」でい続けることはできなくなります。むしろ、「この会社なら、自分の力を発揮できるだろう」と、誰もが安心して働ける環境を整えた企業こそが、多くの人に選ばれていくのです。
採用と定着の本当の決め手は、制度ではなく、人です。「この人を、ちゃんと見よう」「この人が力を発揮できる環境を、一緒に作ろう」その姿勢があれば、制度は「後押しする道具」として機能します。
「この機会に、組織を"無理なく多様性のある職場"へ近づけよう」という決断から始まる企業が、最終的には採用と定着の両方を成功させるのです。
計画的に、丁寧に、そして前向きに進めてください。2026年7月の引き上げは、企業にとって大きなチャンスです。法的な義務であると同時に、組織をより良くするための機会なのです。
もし、障害者採用についてのご相談やご質問があれば、障害者転職エージェント ハッピーへお気軽にご連絡ください。採用計画の立案から、採用後の定着支援まで、人事のパートナーとして、丁寧にサポートさせていただきます。
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※本コラムの内容は2025年12月時点の情報に基づいています。あなたの特性を活かしたキャリアについてのご相談は、お気軽に上記窓口までお問い合わせください。あなたの新しい物語が始まることを、心から楽しみにしています。
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