デジタルマーケティング事業とインターネット関連サービス事業、この二つの事業を主軸に18社のグループ会社を展開している株式会社CARTA HOLDINGS(カルタホールディングス)。日本をリードする総合デジタルマーケティング企業として、いち早く民間の障害者専門エージェントを利用した採用活動の導入だけでなく、年々上昇する障害者雇用率に対応するため、さまざまな時流に合った採用手法を取り入れながら安定的な障害者雇用率の確保を進めてきました。今回、その変遷と今後の障害者雇用に関する展望に迫る人事インタビューを実施させて頂きました
望月 大輝 様(もちづき だいき)
2015年に旧サイバー・コミュニケーションズ入社。人事に異動後、新卒採用から障害者採用等の採用全般を担当。2021年CARTA HOLDINGSのHRBP業務を担当。現在に至る。
Qはじめに社内での望月様の役割を教えてもらえないでしょうか。
A以前は新卒採用や障害者採用を中心に担当しておりましたが、現在は事業部のHRBPとして、6〜7社ほどのグループ会社の人事を担当しております。その中でも私は特に新領域事業のグループ会社の人事面や労務面のサポートを中心に対応しております。当社は既存事業の拡大と併せて、新規事業の創出を続けておりますが、新規事業の場合、既存事業とは異なるビジネスモデルとなるため、これまでと異なる採用手法、制度設計、働き方などをゼロから整備する必要があります。当社には20社前後のグループ子会社がありますが、ひとつひとつに特色があるため、やりがいを持って働くことができております。
Q株式会社CARTA HOLDINGS様の基本的な障害者雇用の考え方についてお伺い出来ないでしょうか。
A当社では、以前から障害種別や障害程度に関わらず、様々な形で事業に貢献できる方の採用を大切にしております。また採用だけではなく、入社後の定着や活躍を目指して、丁寧にフォローをしていくことも大切にしています。
Qグループ連結で1000名を超える大所帯ですが、どのような採用方法を導入されているのでしょうか。
A大きく分けて二つの手法を取っております。一つ目は、ハローワークや障害者専門のエージェントを利用することで事務職やITエンジニアなど、オフィスで働く方の採用を目指した社内就業モデルです。二つ目は、屋内型、屋外型の農園での社外就業モデル。この二つの手法を併用しながら安定的な障害者雇用の実現を目指しております。Q社内にどういったご障害をお持ちの方が在籍なさっていて、どういった部署でご活躍されているのでしょうか。差し支えない範囲でご教示頂けると幸いです。
A社内就業に関しては、発達障害やうつ病等の気分系障害と言われる精神に障害のある方の雇用比率が高くなっております。もちろん、上肢や下肢に障害のある方、循環器障害等の身体障害のある方も在籍しています。所属部署に関しては、バックオフィスが中心ですが、事務系専門職やITエンジニアとしてご活躍している方もいらっしゃいます。過去には、営業としてご活躍された方もおりますので、障害者雇用だからといってキャリアが限定されることはありません。農園での社外就業に関しては、他社様と同じように精神障害をお持ちの方や知的障害をお持ちの方を中心に雇用しております。
Q 障害者採用の面接で望月様が丁寧に確認していくところは、どの辺りでしょうか。
A ひとつ挙げるとするならば、柔軟で臨機応変な対応ができるかという点は丁寧に確認をしていきます。個人的な意見ですが、真面目にコツコツ取り組めるとか、妥協なく頑張れりということも魅力ではありますが、当社では変化をポジティブに受け入れられる方、積極的にチャレンジし、上手くいかなくても、そのプロセスで得たものを次に活かせる方とは相性が良いかもしれません。当社の属するインターネット業界は変化の激しい業界ですので、このような点は丁寧に確認をさせていただきます。
Q人事として障害のある方のみならず、従業員の方の雇用管理で気を付けているところがあれば教えて下さい。
A業務外を含めて、社員一人一人を深く理解できるよう心がけています。グループ会社を含めると20社前後の組織ですが、定期的に人事と事業責任者の間で「人」について話す時間を作っています。例えば子供が生まれたばかりで安眠できないだとか、最近パートナーと離別して気持ちがしんどいとか、人間ですので、こうした個人的な問題が業務パフォーマンスに影響します。仕事に取り組むうえでの気持ちの変化は誰にでも起こり得ることですが、その中でも障害のある方や一人親の方、休職明けの方など、働くことに制限がある方はそういった状況に陥りやすいので、注意深くモニタリングするようにしております。
Q何らかしら働くことに制約のある方、ご障害のある方、ワーキングママさん、休職明けの時短社員さん等の雇用管理で重要になってくるところは、どんなところでしょうか。人事目線でご教示下さい。
A自社で作成したサーベイを利用して社員の心身の状況をリアルタイムに把握し、何かしらの理由で心身の状況が優れない社員に関しては、早めに声をかけるように心がけています。サーベイは業務へのモチベーションや睡眠の状況などを回答できるようになっており、困ったことがあれば、人事と面談を希望することもできます。このように、たとえ問題が起こったとしても初動の速さにより状況悪化を防げるような体制を構築しています。
Q望月様は入社から採用業務に長く携わっていらっしゃるので沢山のエピソードをお持ちだと思いますが、思い出深い採用エピソードがあれば教えて頂けないでしょうか。
A一番思い出深い障がい者採用のエピソードをお伝えさせていただきます。その方は発達障害をお持ちのITエンジニアの方でしたが、前職時代に二次障害としてうつ病を罹患されました。ただ障害理解が高く、ご自身の苦手なことや求める合理的配慮を明確に伝える力が際立っていました。例えば談笑の中で文脈を読むことや口頭のみでの曖昧な指示を受けることが苦手であることを、複雑な業務は文字だけでなく図を用いた説明があるとより理解が促進されることなどがありました。
精神障害者保健福祉手帳を保持している方は、目に見えないご障害を抱えているため、苦手なこと以外にも罹患経緯や手帳取得前の業務内容を深い自己洞察のもと面接官へ巧くアウトプットしていただけると、入社後の安定就労イメージを持ちやすくなります。私は障害のある方の面接経験は多くはないですが、自己理解だけでなく、その内容を適切に面接官や上長へ説明できる方ほど、長期就業を実現されていると思います。
Q今度は望月様のパーソナルな部分に迫らせて頂きたいのですが、望月様は社会保険労務士の資格を取得しておりますが、働きながらの学びは大変だったのではないでしょうか。
A資格取得までの時間は有意義でしたが、とても大変だったのは今でも覚えています。私は社会人4年目で試験を受け合格しましたが、当然、社会人ですから、平日の日中に勉強はできません。夜も仕事で疲れて眠くなってしまうので、朝の通勤時間や休日を利用して学びを深めました。勉強法だけではないと思いますが、限られた時間の中で成果を出していくためには、他者の成功体験ではなく、自身に合った成功スタイルを確立することが一番の鍵になると思います。
Q現職と社労士の両立を上手く機能させるためにしていることがあれば、教えてください。
A社労士として得た知識を積極的に業務で使うようを心掛けております。たとえあまり経験がない分野や担当外のことに関しても、自分でできそうなことには当事者意識を持って積極的に関わるようにしています。様々な分野が複雑に影響しあう人事領域においては採用、給与計算、社会保険手続き、就業規則作成等、幅広い領域を理解している必要があります。私は「人事はジェネラリストがスペシャリスト」だと考えておりますが、一つの分野に閉じることがないよう、人事としての業務と社労士としての経験・知識をリンクさせながら業務を行っています。
Q個人的な質問ですが、リスキリングや時代に合った人事制度面の改革等、望月様ご自身がVUCA時代(不確実性の時代)を乗り越えていくためのスキルや心構えを結果的には、いち早く会得した印象がございますが、この辺りは如何でしょうか。
A業務のうえでの自立性を高める、もう少し平易な言葉を使うと、日々自分ひとりでできることを増やすことを意識しております。人間は一人で仕事をしていくことは難しいですが、先が見通しづらいVUCA時代と言われる昨今、個人は自立して働くことが求められます。おかげさまで、私も人事として経験値を少しずつ重ねられておりますが、税金や投資等の関連領域に関しては、まだまだ学びが必要だと考えています。
「VUCA時代」とは・・・現代の社会やビジネス環境の特徴を表す言葉で以下の4つの要素から成り立っている造語です。1. Volatility(変動性):変化が激しく予測が難しい状況。2. Uncertainty(不確実性):未来が不確かで、予測が困難な状況。3. Complexity(複雑性):多くの要因が絡み合って、物事が単純でない状況。4. Ambiguity(曖昧性):情報が不明瞭で、解釈が複数存在する状況。
Qプライベートなご質問で恐れ入りますが、日々ご多忙の中、お休みの日はどういったお時間の過ごし方をなさっているのでしょうか。
A 休日は、公園で3歳の娘と一緒に遊んだり、社労士としてのお仕事をしたり、知人と情報交換という名のもとお酒を飲みに行ったり(笑)基本的にはお休みの日も忙しなく動いております。
Q最後にこれから障害者雇用にチャレンジしようとしている方々へメッセージを頂けたら幸いです。
A
人事担当者から見ても障害者採用は企業によって理解や取り組み方が大きく異なり、それぞれの企業の色彩や個性は本当に様々です。また求人への応募可否には、施設面等の事情により、受け入れ困難な障害がある場合もございます。そういった自分の力ではどうしようもない事情があることをふまえて、勇気を持って行動し続けていくことが最も大切なことだと思います。繰り返しますが、障害者採用は企業ごとに採用スタンスや評価基準が違ってきますので、あまり成果にこだわり過ぎず、楽観的に継続していくことが内定取得への近道になるかも知れません。その先に必ずあなたを必要としている企業様があるはずですので、自分を信じて行動し続けましょう。
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