現代社会の中で、生きるうえで避けて通れないのが「労働」です。
人は何の為に働くかという問いに対して、
私は「幸せ」になる為に働いていると考えております。
当然、お金イコール幸せとは必ずしも繋がりませんが、都市化された現代社会で一定の幸せを感じるには、それなりの労働の対価としての賃金が必要になってきます。その賃金により経済的且つ精神的に自立した生活を行うことで、現代社会では、真の幸せを感じることが出来ます。
私たちの使命は、一人でも多くの障害のある方へ長期就業出来る求人へのご支援を通じて、
こうした幸せを感じてもらうことです。
働くことは生きることです。
どんな仕事も尊く、 熱心に働く姿は、 ダイヤモンドより美しいです。
今回は、 そんな想いを持つ山口のインタビューです。
Q障害のある方向けの転職エージェントをスタートしようと思ったきっかけは何でしょうか?
Aもともと会社員時代に障害のある方向けの転職支援の経験がございましたが、満を持して2019年夏に障害者専門の転職エージェント“ハッピー”をスタートさせて頂きました。私自身が我がままというかニーズを感じやすいところもあり、長期就業可能なホワイト求人のご紹介だけでなく、お時間を掛けながらキャリアをフラットなかたちで安心して相談出来るところも特徴です。またライフステージに合わせた生活設計、例えば障害年金取得や障害者雇用でのキャリアアップ方法に関しても、お気軽にご相談出来るところも強みです。このように今までにありそうでなかった個人寄り添い型の障害者専門のエージェント、それが“ハッピー“です。
Q話は戻りますが、差し支えなければ、 山口さんのご障害に関してお伺い出来ないでしょうか?
A障害は、大病の治療中に起こった左足首の関節機能障害です。おかげさまで命は助かりましたが、治療の副作用によるダメージが残りました。現在は、ずいぶん回復して通常の歩行、起立等は可能ですが、今でも室内では靴を履かなければスムースに移動することは出来ません。(身体障害者手帳を保持しております)そんな中、不幸中の幸いで社会生活上の制限は、ほとんどないくらいまで回復致しました。まさにこれは拾った命で生きていること自体が奇跡だと思います。良いか悪いか分かりませんが、現在は、辛いことが起こっても、この体験に比べれば大体のことがましなので、辛いことが起こった時は、この経験を思い出すようにしております。
Q大変なリハビリや手術の連続だったと思いますが、 乗り越えられた要因は何でしょうか?
A当時は実家に戻っていたので、一番は家族のサポートのおかげです。もうひとつは諦めない気持ちを持っていたことが乗り越えられた要因かも知れません。マインドフルネスではないですが、なるべく「いま」「ここ」という空間に集中しておりました。また治療成果だけを突き詰めると一喜一憂してしまうので、病気に生活が支配されないようにゆったりと構えていたところも良かったところかも知れません。ただくどいですが、必ず病気を克服して自分らしい人生を再び歩んでいくという気持ちは、常に心の底にございました。ですから難治性の後遺症に関しては、回復の希望を求めて首都圏の病院へ沢山行きましたし、後遺症がどうなるかはわかりませんでしたが、出来ることは全てやり尽くそうという気持ちを持っておりました。無論、漠然とした見えない先に対して気持ちが沈むこともございましたが、これ以上出来ないというところまでリハビリや通院をすれば、多少不自由な面を抱えても次のステージへ挑戦したい気持ちが醸成されてくると思っていたので、その気持ちが苦しいリハビリを乗り越えさせてくれたと考えております。あとは運が良かったとしか言いようがないですね。運だけは強い人間だと思います。
Q運ですか!? 脱線しますが、 個人的に運を上げる方法を知りたいです(笑)
A私も本当のとことは分かりません(笑)病気、障害、事故に関しては、努力では、どうにもならないこと、コントロール出来ない運命的なところもございます。ただ運は普段から明るいイメージを持って、 正しい行動をしていれば、あとから自然とついてくる気がします。大切なことは、同じテンションで毎日やるべきことを繰り返す、その積み重ねが運や成果に繋がっていくのではないかと考えております。そして、たとえ辛いことが起こっても、一旦その事実を受け入れながら歩みを止めないことが大切なことだと思います。繰り返しますが、運を上げていく方法には、方程式はないと思いますが、自分に嘘のない美しい人生を歩むことが運の上昇にも繋がっていくと信じております。
Q山口さんの強さはどこから来ているのでしょうか?
A私自身のメンタルが強いと思ったことは過去に一度もないですが、これは!ということに関しては、何回か上手くいかないとしてもコツコツ継続できる方かも知れません。あとは良く言えば、あまり物事にこだわらないところ、悪く言えば、開き直ることも出来るタイプなので、この辺りが強さとは毛色が違いますが、今まで何とかやれてきたところかも知れません。これは大病の経験から、考えても仕方がないことや過去のことに関しては、あまり逆らわず、受け流すようになったこともストレス耐性が高まった要因だと考えております。とは言え、嫌なことがあれば悩み、気分が落ち込み、夜眠れない時もあるので、決してメンタルが強い人間だとは思っておりません。ただ先程もお伝え致しましたが、集中力や体力がないことも起因しているかも知れませんが(笑)ある程度やって上手くいかない時や、すぐに成果が出ないようなものに関しては、一旦それを塩漬けにして気分が良くなった段階で再チャレンジしております。その小さな積み重ねの継続が、今の自分を形成してきたと考えております。
Q現在、 お身体の調子は如何ですか? また体調管理で気を付けていることはありますか?
A現在は、 おかげさまで健康です。しかし、大病により足以外にも後遺症があるので、なるべくストレスを溜めない生活を心掛けております。体調が悪い時は、早めの服薬や無理のない生活を心掛けております。当然、自分で仕事をやっている為、そういかない状況もございますが、上手く行っていない時こそ、そこには何らかしらの原因があるはずなので、逆にペースを緩めて改善に向けた鳥の目、虫の目、魚の目を持つようにしております。
Q 運動以外で、どんなストレス発散、気分転換をなさっておりますか?
A 睡眠です。睡眠が何にも勝るコーピング(ストレスを対処するための行動)になります。その際、携帯電話等の通信機器はすべてオフにして睡眠を十分に取ります。また2日分くらいの食料を買い込んでおくこともポイントです(笑) あと睡眠の前に交感神経過多になっている状態をマッサージにより副交感神経へ切り替えます。もうひとつは、人に話を聞いてもらうことで、ストレスを発散しております。この方法を他の方に言うと、相手に申し訳ないとかそんなことをすると、お友達が減ってしまうので出来ませんとおっしゃる方が多いですが、月に1回~2回位のお話を聞いてもらえないのは、そもそもお友達ではないと思います。お話を聞いてもらった相手には、たくさん感謝を伝えれば問題ないです。また自己開示することで相手の方にとってもご自身が信頼されていることを理解出来るので、好意的な感情が芽生えるので絆が深まるメリットもございます。
あとはご飯を自炊することです。たまたま知り合いの医師から分子栄養学的のアドバイスを頂き、少しずつですが実践しております。分子栄養学というとやや構えてしまいますが、自炊プラスαでサプリメントを飲むだけで、そこまで厳格なものではないです。またチートデイも作っておりますので、続けられる無理のない範囲で行なっております。ただ簡単な料理くらいしか作れませんが、お料理の時間を確保することで、とても良いリフレッシュになります。またお家でご飯を作った方がお財布にも優しいので、これからも続けていこうと考えております。
Qお話をお仕事に戻させて頂きますが、 いつから独立を考えていたのですか?
A独立を考え始めたのは、 20代に在籍していた株式会社リクルートの頃からです。少し話が逸れますが、私が社会に出始めた2000年代前半は、派遣社員や契約社員という新しい働き方が生まれた時期で、当時の就職氷河期も相まって一流大学を卒業した方でも就職や正社員での就労が困難な時期でした。ご多分に漏れず、私は不器用なところもあり、優秀という表現からは、かけ離れていた学生だった為、いま考えてみれば、たいしたことを悩んでいた時期もございました。ただ同時に空前のI T業界での起業ブームが起こり、組織で働くという以外での選択肢も広まっていった時期でしたので、ゆくゆくは大きな会社でなくても自分自身でやっていきたいという想いが、ぼんやり持ち始めていた為、起業家を輩出しているリクルートさんに入社することになりました。ただ先ほどもお伝え致しましたが、在籍中に大病を患ったことで、その当時、温めていたビジネスモデルや同じ志を持った仲間を病気により失いました。しかし、皆様のおかげにより病気回復後、起業への気持ちも整ってきた2019年7月に障害者転職エージェントハッピーを起業することに至りました。年齢に比べて決して早い企業のタイミングではない為、どうしても焦るときもございますが、目先の利益に左右されず、自身が無理のない状態を保ちながら続けることを意識しております。
Qなるほど。以前からお考えだったのですね。ずばり当初より勝算はありましたか?
Aはい、頭の中のイメージ上では勝算があった為、独立致しました。細かい戦略に関しては、お伝え出来ませんが、私が障害当事者として体験してきたことを事業としてデザインしていけば、多くの方でなくても一定数は支持をしてくれる方は、いらっしゃるのではないかと考えておりました。また心理的に不安は多少ありましたが、せっかく拾った命だったので、後悔のない時間の使い方をしたかったということも背中を押してくれた要因です。とは言え、障害者雇用で入社した前職の居心地は、とても良くて正直言えば、このまま定年まで居ても良いかなと思っていました。ただ障害者雇用あるあるという言い方は、不適切かもしれませんが、私が所属していた会社は、特例子会社でしたので、収入面の制限、そしてキャリア形成という部分でも年次が高くなるにつれて天井が見えてきた部分もあった為、この辺りの制限も一度外したかったということも理由のひとつです。ただ何度もお伝えしておりますが、風通しの良い会社だったので、本音を言えば、最後の最後まで退職を悩んだのは事実です。
Q起業してからの生活は変わりましたか?
A障害や過去の大病を言い訳にするつもりはないですが、大病を患っているので、やはり組織で働いている時に比べて現在のようにマイペースで働ける環境は、体力的だけでなく、心理的な負荷も減りましたので、より健やかになれました。体調が悪い時は、早めに休んだり、仕事量を減らしたりして、ゆっくり時間を過ごすことが出来ますが、大企業に勤めている時は、そうはいきません。また競争も激しく、プレッシャーも大きかった為、何とか毎月成果を出さなければならないという気持ちが強くなり、かなり心理的に追い込まれていた時期もございました。しかし、起業後は、起業後で悩みもございますが、最終的には、すべて自己責任ですので、肝を据えて取り組めるので、それはそれで私の性に合っております。また私にとって前述したように自分の求めるクリエイティブを追求できること、そして自分自身が描いたビジネスデザインが成果に繋がることは、まさに仕事冥利に尽きます。
Q山口さんがお仕事をするうえで気を付けていることは、どんなことですか?
Aプロ意識ですね。お金の大小は関係なく、対価としてお金を頂くことになれば、プロのビジネスパーソンとしての意識が必要です。その意識が高ければ、働くことを楽しむことも出来ます。時々ですが、首都圏の障害者雇用での平均年収は300万円~400万円位で高くないという印象を持つ方もおりますが、日本のプロサッカーリーグのJ3選手の平均年収は300万円〜400万円前後が中心で、彼らは大きな夢と感動を社会や子供に与えております。ですから、一概にお金の大小だけでは判断は出来ません。大切なことは、お金を頂く以上、どんな仕事であってもプロ意識を持って取り組むことが、真理だと考えております。
Q障害のある方の就労の課題点については、 どんなところだと思いますか?
A前提、完璧な国や社会は存在しないので細かい課題点を挙げればきりはないですが、総じて日本の障害者雇用は諸外国に比べて整備されている方だと思います。またコンフォートゾーンから出れば、夢や目標は、比較的実現しやすい社会システムだと考えております。(※コンフォートゾーン=自分自身にとって居心地のいい場所・安心安全な場所)勿論、教科書通りの戦略では上手くいきませんし、強い覚悟も必要になります。時に綺麗事だけでは済まないこともございますが、従来の枠に囚われず、粘り強く行動を継続していけば、必ず理想の働き方や自分を手に入れることは出来ると思います。
また一般事業会社での受け入れが難しいレベルの重い障害や依然として受け入れに関して前向きに検討しづらい精神障害に関しては、障害のある方や民間会社の努力だけでなく、国レベルの本質的な支援は不可欠になってきます。この官民一体となった取り組みがあってこそ、日本の障害者雇用が一歩前に進むことが出来ます。
Qずばり障害者専門の転職エージェントとしてのハッピーの強みは何でしょうか?
Aマッチング精度を含めたサービスの質の高さです。そもそも内定はいくつも必要ございません。候補者様の深い納得感が持てる一社があれば十分ですので、特に現職中の方や売り手市場の代名詞のような属性の良い身体障害者の方に対しては、大量のマッチングは致しません。また精神にご障害がある方は、全体的に体力がない方が多いですので、顔色や体調を慎重にお伺いしながら進めるように最新の注意を払います。また障害者の転職エージェントとして基礎行動になりますが、転職決定要素に関しての事前確認は勿論のこと、最終的な意思決定に関しては、ご本人のみで決めるものなのか、それとも家族やパートナーへご相談が必要になるのか、先に確認しながら全ての関係者のご負担が少ない進め方を目指しております。このようなスタンスは、企業様に対しても同じで入社後、しっかり活躍出来る方のみ厳選してご紹介することで信頼を獲得しております。とにかくカスタマードリブンな姿勢というのが、私たち障害者転職エージェントハッピーの強みになります。
Qコロナ禍が終息しつつある障害者雇用の状況は、現在如何でしょうか?
A
ご存知の如く、新型コロナウイルスの影響で一時は採用凍結が起こり大きな影響がございました。しかし新型コロナ対策としてのマスクの着用について、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、2023年5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行致しました。5類感染症とは、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する国の法律)が定める感染症の5類型のうちのひとつで、感染力や重篤性などに基づく総合的な観点からみた危険性が最も低いとされるものです。季節性インフルエンザや麻疹、風疹、感染性胃腸炎、RSウイルス感染症などの一般的な感染症は、ここに分類されております。このように一旦、全容が見えなかったコロナウィルスの脅威からは、解放されつつございますので、各企業様の採用活動熱度は、コロナ禍前のようになってきております。もうひとつは少し余談になりますが、ここ数年で障害者専門の人材紹介会社や転職サイトが、首都圏だけでも飛躍的に増加した印象です。私が知る限り、40社前後のサービスが、いま存在しているのではないかと思います。こうした背景は、利用者(個人)にとっては、選択肢が増えたので良い面かも知れません。
Q希望する企業から内定取得するには、 どういったことが大切になってくるのでしょうか?
Aまず「笑顔」ですね。面接官がご一緒に働きたいと思わせる「笑顔」が大切になってきます。表情には、その方の内面、生き方、現在の心身の状態が如実に表れます。勿論、現実的には笑顔だけで内定取得は出来ませんが、書類選考通過後の大切な要素として笑顔をはじめとした対面印象が挙げられます。そのほかの要素としては、面接官へ長期就業イメージを如何に持って頂けるかどうかというところも大切になります。具体的には、発信内容、組織従順性(社内調和)、論理性(一貫性)等も判断されますので、出たとこ勝負ではなく、入念に準備されることをお勧めさせて頂きます。一見このような面接対策は、面接対策の為だけの一時的な作業のような印象になりがちですが、自分を見つめ直す機会なりますので、最初は抵抗感があるかも知れませんが、是非、落ち着いた環境で実践してみて下さい。
Q思い出に残る障害者雇用でのご支援はございますか?
A それぞれのご支援にそれぞれのドラマがあり、なかなか一つ選ぶことは難しいのが本音です。ただ私が紹介させて頂いたお仕事を生計の中心にされている方が多いので、入社後の新生活をお伺いする度に気が引き締まります。また法人側もお客様になりますので、採用成功後、良い方をご紹介してくれて有難うございます、というお言葉を頂けると感慨深くなります。一般的に転職エージェントは派手なお仕事と見られがちですが、日々の業務は地味でコツコツした作業が多い為、内定承諾後の喜びは格別です。また障害者雇用は、健常者領域と比べると職務スキルだけでなく、ご障害もございますので、求人マッチングや進捗管理への工数が多く、ひとつひとつの作業にも神経を使いますが、同時に大きなやり甲斐にも変わります。今後も過去に「はたらく」を諦めてしまったご障害のある方やご障害をお持ちでも、まだまだチャレンジして行きたい方の転職支援をひたむきに、そして謙虚に続けていきたいと考えております。
Q最後に現在、 障害者雇用にチャレンジしている求職者へ向けてメッセージをお願いします!
Aまだまだ未熟な私が皆様へアドバイスを出来る立場ではないですが、一度しかない人生を障害や病気に支配されないで大胆に生きて欲しいと考えております。時には落ち込んだり、弱音を吐いたり、立ち止まることもあるかと思います。逆にそういった時期がない方はおりませので、ごく自然なことです。過去、私自身も長く歩みを止めていた時期(引きこもり)がありましたが、人生には、そういった時間があることで、より力強く生きていけるようになるのです。そしてプロレスラーのアントニオ猪木さんが仰っていたように「花が咲こうが咲くまいが、生きていること自体が花」であり、「生きていること自体が一番尊い価値」になります。ですから、あまり仕事の浮き沈みや成果だけにこだわらず、このかけがえのない人生を明るく楽しんで下さい。皆様のご活躍を心より応援しております。本日は有難うございました。
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