日本初の身体障害者手帳を保持する当事者が経営するエージェント「ハッピー」代表山口のインタビュー | 障害者転職エージェント ハッピー

創業者山口徳二の起業秘話、逆境を乗り越えてきた軌跡

働くことは生きることです。 どんな仕事も尊く、 熱心に働く姿は、 ダイヤモンドより美しいです。


日本の障害者転職エージェントの多くが、 大手人材紹介会社の資本が入っている中、 独立系のスタートアップ、 そして創業者自身が身体障害者手帳を保持しているというユニークな形態でハッピーはスタート。

また入社後のミスマッチの原因のひとつになる短期間での大量の求人マッチングは行わず、 1社1社丁寧な求人紹介や候補者(障害者)へホテルのコンシェルジュのようなきめ細やかな転職サポート等、 他社にはない独創性溢れるサービスで差別化を図り、 現在、 高い支持を集めております。

日本の障害者雇用は「短期転職市場」であり、 1社平均在籍は約3年です。
まず定着率を上げることが、 日本の「障害者の働く」を向上させるファーストステップになります。
限られた職業人生という時間の中で、 1日も早い天職との出会いが障害者の方の幸せに繋がります。

働くことは生きることです。
どんな仕事も尊く、 熱心に働く姿は、 ダイヤモンドより美しいです。

今回は、 そんな高い志で創業した山口徳二の創業秘話を中心とした個人に迫るレポートです

【1】

Q まずご自身が身体障害者手帳を保持して体力的なハンディキャップがあるにも関わらず、 独立しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

A もともと独立志向が強く、病気で紆余曲折をしちゃいましたが、いつか自分自身でチャレンジしてみたかったです。

あと身体障害者手帳は持っておりますが、中途障害者ですし、人と比べることではないですが、日常生活に大きな不自由はないので、深いところでは自分自身が障害者という気持ちは、持っておりません。障害受傷後、簡単に言えば自尊感情が落ちてコンプレックスを持っていた時期もありますが、 それ以上に、毎日働けて、歩けて、ご飯も食べられる、好きな時に自分の足で移動できる、このような日常の当たり前に感謝出来るようになったことが、独立の背景にあります。

また健康の大切さは失って初めて気付く方が多いですが、私の場合、おかげさまで社会復帰出来るまで回復が出来たので、 残りの人生は悔いのないように手抜きなく、全力で生きて行きたいと考えております。

【2】

Q 差し支えなければ、 山口さんのご障害に関してお伺い出来ないでしょうか?

A 左足首の関節機能障害です。命は助かりましたが、治療の副作用で複数ダメージが残りました。現在は、だいぶ回復して通常の歩行、起立等は可能ですが、今でも室内では靴を履かなければスムースな移動は困難です。ただ社会生活上の制限は、ほとんどございません。本当に感謝です。まさに拾った命ですので、残りの人生は大切に生きて行こうと強く思っております。

【3】

Q 大変なリハビリや手術の連続だったような気がしますが、 乗り越えられた要因は何だったのでしょうか。

A  当時は実家に戻っていたので、一番は家族のサポートです。あとは私自身の諦めない気持ちがあったことも要因かも知れません。 マインドフルネスではないですが、 「いま」「ここ」で出来ることだけに集中して前へ進みました。またあまり治療成果を突き詰めて考えると一喜一憂してしまうので、ゆったり構えていたのが良かったかも知れません。あとは運が良かったとしか言いようがないです。運だけは強いと思います。

【4】

Q 運ですか!? 脱線しますが、 個人的に運を上げる方法を知りたいです(笑)

A 私もあまり分かりません(笑)病気、事故に関しては、コントロール出来ない運命的なところも残念ですがあります。ただ私の勝手な想い込みですが、運は普段からより良いイメージを持って、 直向きに行動していれば、自然とついてくると思います。大切なことは、毎日同じことを繰り返し続けていくことです。同じテンションでやるべきことを繰り返す、その先に運も成果も手に入れることが可能です。

【5】

Q  山口さんの強さはどこから来ているのでしょうか。

A  私自身が強いと思ったことは一度もないですが(笑)ただ、そう言ってもらえることは嬉しいです。強みではないかも知れませんが、もし何回か上手く行かないことがあっても、継続はする方かも知れません。言い方変えれば、めげない男です(笑)ただ決して器用ではなく、物覚えも悪いので、もう少し要領良くなりたいです。

【6】

Q 回復後、 障害者手帳を取ったきっかけを具体的に教えて下さい。

A  実は、私から医師にお話を持ち掛けて取得手続きを開始致しました。最初は、あまり医師も前向きではなかったのですが、 最終的には説き伏せました(笑)障害者手帳以外でも障害年金や福祉サービスに関しても本当でしたら申請する権利があるにも関わらず、 諦める方もおりますが、少しもったいない印象です。たとえご障害があっても、自ら行動しないと誰も手を差し伸べてくれない現実もございますので、セルフスターでいることをお勧め致します。

【7】

Q 現在、 お身体の調子は如何ですか?また体調管理で気を付けていることはありますか?

A 現在は、 おかげさまで健康です。当然、足以外にも大病によってダメージがある箇所はあるので、 自己洞察力を高めて変化には敏感になるようにしております。もし万一、調子の良くないサインが出た場合、早めに休息を取るように心掛けております。また私の場合ですが、何処となくやる気がない、気分が優れない時は、運動不足の時が多いので、長めの散歩を行います。それも、ただ歩くのでは楽しくないので、好きな街を歩きに行きます。散歩のようなリズム運動はセロトニンを分泌します。また日光を当たることでもセロトニンの分泌が多くなるので取り入れております。


【8】

Q 散歩以外で、どんなコーピング(ストレス発散)をなさっておりますか?
A 私の場合、 まず睡眠です。睡眠が何にも勝るコーピングになります。その際、携帯電話等の通信機器はすべてオフにして睡眠を十分に取ります。また2日分くらいの食料を買い込んで自宅に引き篭もります(笑)あとエネルギーの回復を高める為、睡眠の前にマッサージにもよく行きます。普段、候補者様の人生が掛かった緊張感の高い仕事を行なっているので、交感神経優位の状態過多ですので休息を取る時には、副交感神経優位の状態に切り替えてから休息を取ることで効果を高めております。

あとは、とにかく聞いてもらいたいことがあれば、人に話します。話しを聞いてもらうことで、ストレス発散をしております。この方法を障害者の方に言うと、相手に申し訳ないとかお友達が減るようなことを言う方が多いですが、月に1回〜2回位のお話しを聞いてもらえないのは、お友達ではないと思います(笑)そして、お話を聞いてもらった相手には、たくさん感謝を伝えることがポイントでありエチケットです。

【9】

Q お話をお仕事に戻させて頂きますが、 いつから独立を考えていたのですか?

A 独立を考え始めたのは、 20代に在籍していた株式会社リクルートの頃からです。ただ先ほどもお伝え致しましたが、在籍中に大病を患ってしまったので、その当時、考えていたビジネスモデルや仲間もおりましたが、病気でビジネスどころではない状況になってしまいました。

皆様のおかげで社会復帰が出来て、徐々に体力も気持ちも整ってきたので、2019年に起業に至りました。ただ高い成果を出すことが目標ですので、まだ始まったばかりと言うのが本音です。年齢に比べて決して早い起業ではないので、確実に成果を出し続けて行きたいと考えております。

【10】

Q なるほど。以前からお考えだったのですね。ずばり聞きますが、当初より勝算はありましたか?(笑)

A 勿論、勝算があったので独立しました。戦略的なことはお伝え出来ませんが、私が障害当事者として体験したことをもとに新たなサービス開発をすれば、必ず支持されるのではないかと確信しておりました。また心理的に不安は多少ありましたが、私の経験上、やらなかった後悔はなぜか記憶に残ります。ですから同じ後悔なら記憶から消えやすい後悔を選びました(笑)すなわち、 やってみるということです。

たとえ、もしうまく行かなくても命を獲られるわけではないですし、そういった意味では、心理的には抵抗感はなかったです。人材業界も10年以上おりましたし、経営者の先輩方からも太鼓判は押されていたので、漠然とですが根拠のない自信が後押しをしてくれたような気がします。

【11】

Q 起業してからの生活は変わりましたか?

A はい、大きく変わりました。候補者様とお逢いすると、逆に、こちらが身の引き締まる思いになります。また候補者様の人生が掛かっていると思うと、必ず納得感の深い転職支援を実現しようという強い覚悟が生まれます。

特に私たちのような小さな組織に頼って来てくれたる候補者様には、どこにも絶対に負けない価値提供を行おうという気になります。

【12】

Q ご自身での経営と会社員だった時との違いは、 どういったところでしょうか?

A 業務の幅広さです。会社勤めだった頃は、限定的な範囲のみ遂行していればよかったのですが、 現在は全て対応しなければなりません。ただ、ほとんどの経営者がそうだと思いますが、事業を自由にデザインして、ビジネスが出来るのは、理屈抜きに本当に楽しいです。いくら工数が掛かっても不思議なことに苦にならないです。こういった醍醐味は、組織人ではなかなか得られないところだと思います。


【13】

Q 山口さんがお仕事をするうえで気を付けていることは、 どんなことですか?

A 一言で表すと、 プロ意識です。お金の大小は関係なく、対価としてお金を頂くことになれば、プロのビジネスパーソンとしての意識が必要です。その意識が高ければ、成長スピードも高まると考えております。

時々ですが、 平均300万円~400万円位の障害者求人の年収だけで、あまり高くないという印象を持つ方もおりますが、日本のプロサッカーリーグのJ2選手の平均年収は400万円前後、J3では300万円台が中心ですが、彼らは大きな夢と感動を社会や子供に提供しております。

ですから、 一概にお金の大小だけでは、 判断は出来ません。 大切なことは、お金を頂く以上、どんな仕事でもプロ意識を持って本気で取り組むことだと考えております。


【14】

Q 現在の日本の障害者採用の課題点については、 どんな所だと思いますか?

A 私の極端な主観になってしまいますが、 個別性が高い領域ですので、一概には言えませんが、総じて日本の障害者採用は諸外国に比べて整備されている方だとは思います。前提、完璧な国や社会はないので細かい課題点を挙げればきりはないのですが、日本の場合、健常者領域の労働環境を含めてコンフォートゾーンから出れば、夢や目標は、比較的実現しやすい社会環境だと考えております。

*コンフォートゾーン=「居心地のいい場所・安心安全な場所」


【15】

Q 障害者転職エージェントハッピーの強みを一言で表すと何でしょうか?

A サービスの質の高さです。そもそも内定はいくつも必要ございません。候補者様の深い納得感の持てる1社があれば十分ですので、短期間での大量マッチングは行いません。1社ずつ丁寧に候補者様に合わせてご案内を致します。これは企業側に対しても、同じで入社後、しっかり活躍出来る方を厳選して紹介することを心掛けております。

そして、まだあまり外部にお伝えしていない特徴としては、もし候補者様に合った障害者求人がない時は、候補者様のご要望に合わせて、個人的に求人開拓をさせて頂きます。そのアプローチの結果、 内定取得をした方もおります。


【16】

Q 転職エージェント経由での転職数は、 障害者全体の転職数に比べて低いと思いますが、 そのあたりはどう思われておりますか?

A それは事実だと思います。ただ転職手段は、エージェントが全てではないです。他の手段もあります。人によっては、 障害者転職エージェント経由での転職が合わない方もおりますので、全く落胆する必要性はないです。

When one door closes, another door opens.

*訳:チャンスを1つ失っても、 また別のチャンスがやって来る

また障害者転職エージェントは、東京を中心としたオフィスワークに限定した支援範囲ですので、受け入れ側(企業側)の事情も多少あるので仕方がないところもございます。現状、身内に甘いわけではないのですが、民間のエージェントも各社精一杯頑張っているのも事実ですので、本質的な課題解決に向けては、国家レベルでの動きが必要になって来ます。

その中で主観で強いて挙げればですが、公的な資本が大きく注がれている就労移行支援機関からの就職件数です。通所後の戦力化人材の供給人数は、就労支援機関数と比べるとやや少ないのが現状です。現在、通所することが目的になり、会社での活躍、長期就業を見据えた実践的なサポート、就職成果がまだ十分には出来ておりません。
当然、 就労移行支援機関のみならず、通所している障害者個人の健康管理を含めた*職業準備性の底上げも必要になってきます。この両輪が動き出して初めて雇用状況は好転していく気がします。

*就労準備性とは・・・働くことについての理解・生活習慣・作業遂行能力や対人関係のスキルなど基礎的な能力のことです。職種、障害の有無を 問わず、働く上で必要とされます。 働く、働き続けるためには、「健康管理」「日常生活管理」「対人スキル」 「基本的労働習慣」「職業適性」の5つの事柄に対する能力が必要となり ます。


【17】

Q 障害者雇用で内定取得するには、 どういったことが大切になって来るのでしょうか。

A 敢えて私からひとつお伝えさせて頂くと「笑顔」ですね。面接官がご一緒に働きたいと思わせる笑顔があれば、前向きに検討して頂けます。表情には、その方の内面、生き方、現在の心身の状態が如実に表れます。

また気分系のご障害の方については、表情が硬い方が多いですので、表情が乏しいと寛解しておらず、症状が重いと判断されるケースもございます。勿論、現実には笑顔だけでは、内定は取れませんが思っている以上に障害者雇用とは言え、ビジネスシーンでの対面印象は、選考要素に大きく影響します。


【18】

Q 逆に障害者を採用する企業側の採用選考でのポイントはどういったところでしょうか。

A 多数ありますが、今回ひとつ挙げるとしたら、「心身の健康管理を含めた職業準備性」です。自己受容が高く、適切な言動、行動、年齢相応の振る舞いが出来るかどうかが大切になって来ます。違った言い方だと「素直さ」と言っても良いでしょう。こういった就労への適切な基本姿勢があれば、業務習熟度も上がり易く、障害者雇用のロールモデルになれる資質があります。逆に、どんなに能力が高くても、こういった基本姿勢がなければ、長期的で安定した就労は叶いません。


【19】

Q まだ創業からお時間は経っていないですが、 思い出に残るご支援はございますか?

A  全員に思い出があり、選ぶことは難しいです(笑)候補者様の一人一人にドラマがあり、感動があります。また法人側もお客様になりますので、採用成功後、良い方をご紹介してくれて有難うございます、という温かいお言葉を頂けると感慨深くなります。外から見ると派手なようなエージェント業ですが、実務は地味でコツコツした作業が多いので、内定承諾後の喜びは格別です。


【20】

Q コロナ禍で障害者採用へも影響はあると思いますが如何でしょうか。

A 確かに影響はございます。事実、求人数は減っておりますが、一方で一部企業様は、感染に注意を払いながら採用活動は継続されております。ただ決して景況感は上向きではないですので、もし面接依頼を頂けた時は、企業様の採用熱度も高いですので、万全の準備を期してから臨むことをお勧め致します。いつの時代も「チャンスの神様は前髪しかない」です。


【21】

Q 最後に現在、 転職活動中の障害者の方へ向けてメッセージをお願いします。

A 私はまだ未熟者なので皆様にアドバイスが出来る立場ではないのですが、同じ障害者手帳を持っている立場として、ひとつだけメッセージをお伝えさせて頂きますと「障害に支配された生活」は送らないでください。

障害を持っていることは事実ですが、人生の時間も限られていることも事実です。時には落ち込んだり、弱音を吐いたり、立ち止まることがあります。逆にそういう時期がない方はおりません。過去、私自身も長く立ち止まっている時期がありました。

しかし、一度しかない人生、最後まで障害に振り回されてしまうのは少し勿体無いです。その為には、ご自身の障害を理解して、うまく使いこなせるようになることが大切です。皆様のご活躍を祈念しております。